最新記事

アメリカ社会

コロナ禍で迎えるハロウィーン 製菓メーカーは広告戦略に苦慮

2020年9月14日(月)11時48分

ハーシーでは、ハロウィーン関連の売上高の約半分は「トリック・オア・トリート」頼みだという。同社はロイターの取材に対し、今年は昨年に比べ、主としてオンラインでの購入者をターゲットとして、ハロウィーン関連のデジタルメディア支出を160%増加する計画だと話した。また、グミキャンディ「サワー・パッチ・キッズ」を製造するモンデリーズでも、今年のハロウィーンではソーシャルメディア、デジタルメディアへの投資を増やす計画だと話している。

在宅派、外出派とも満足させる

マーケティング分析会社オプティマイン・ソフトウエアのマット・ボーダ最高経営責任者(CEO)によれば、今年、米国の親たちのなかで子どもを「トリック・オア・トリート」に送り出すつもりでいるのは約3分の1にすぎないという。「製菓企業に取っては大きなジレンマだ。予想される売上高減少をどうやって克服するのか」

製菓産業のマーケティング戦略において重要な柱となるのは、もはや外を出歩くことはハロウィーンに不可欠な要素ではない、と人々を説得することだ。

本番までの3ヶ月間、製菓企業が訴え続けているのは、消費者は「自宅で過ごすハロウィーン」のためにお菓子を買うべきだ、というメッセージである。ウォルマートやターゲットといった小売企業も、早ければ8月には店舗のハロウィーン装飾を開始し、こうした考え方を補強している。こうした動きにより、ハーシーの季節商品の売上高は、これまでのところ24.8%増加している。

ポイントは、家で過ごすハロウィーンに向けた製品購入を、それにふさわしい相手に向けて訴える一方で、子どもとともに近所を回る行事を続けようとする人々にも疎外感を与えないことだ。

「ZIPコードに応じて広告を調整する能力はある」とハーシーの広報担当者アリソン・クラインフェルター氏は言う。ZIPコードとは、米国郵政公社が地域を特定するために用いる郵便番号だ。「我が社のチームは、都市や大きな州のなかで、どのように違いがあるかを把握できる」

ハーシーが毎週分析しているグーグルのデータは、どの人々が外出する可能性が高いか、地方自治体がその地域における移動をどの程度制限しているかを示してくれる。ハーシーによれば、これは完全に匿名のデータであり、名前を特定しないユーザーのデータポイントを示すだけだ。購入者アンケートや小売企業、自治体を対象とする調査と合わせて用いられているという。

ウェルズファーゴのアナリスト、ジョン・バウムガートナー氏は「ハーシーがハロウィーン期間以前にどれくらい売り上げを増やすことができるか、それが十分であるか否かは予想不可能だ」と言う。「だがこれによってハロウィーン商戦が大失敗に終わるのを防げるかという点では、可能性はある」


Richa Naidu

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中