最新記事

感染症対策

棺桶、霊柩車でコロナ臨死体験 インドネシア、マスク着用ルール守らぬ者へ究極の罰則

2020年9月8日(火)21時35分
大塚智彦(PanAsiaNews)

花が供えられた棺に横たわるのは公共スペースでマスクをしなかった不届き者。KOMPASTV / YouTube

<腕立て伏せや鞭打ちなどする国はあったが、インドネシアでは驚愕の罰則を科した>

コロナウイルスの感染者数、感染死者数の増加が一向に減少しないインドネシアで政府が率先して進める保健衛生上の感染防止対策として国民に励行を義務付けている「マスク着用」「手洗い励行」「社会的距離確保」の3ルールのうち、「マスク着用」の違反者に対する罰則が厳しくなっている。

これまでの社会奉仕活動と罰金に加えてついに9月2日からは首都ジャカルタの一部でマスク非着用者に対して棺桶の中に横たわるという変則的な「罰則」が適用された。

しかしこの様子を伝える地元の新聞テレビの写真や映像が瞬く間にネットなどを通じて拡散し「非人道的」「人権侵害」「やりすぎ」など非難囂囂の状態になり、「棺桶に横たわる」という罰則を科していた地元の「風紀取締隊(Satpol PP)」は今後別の罰則に切り替えたい、と中止を示唆する事態になっている。

ところがその一方でジャワ島東ジャワ州の地方都市プロボリンゴでは9月7日から、市内の市場で始まった「マスク非着用者の摘発」でマスク非着用が咎められた商売人や市民が普段はコロナ感染死者を医療機関からコロナ死者専用指定墓地まで運ぶ「霊柩車」の中に数分間留まるという新たな「罰則」を科していることが明らかになり、話題となっている。

棺に横たわり100まで数える罰

ジャカルタ東部にあるカリサリ地区とパサール・レポ地区で4日から始まった「風紀取締隊」による「マスク着用チェック」でマスクを着用していなかった市民に対して「棺桶に横たわり1~100まで数える」という「罰則」は大きなニュースとなった。棺桶は蓋をするわけでなく、また時間も約1分強と短時間だった。

通常ジャカルタ州政府のマスク非着用者への罰則は「罰金」か「後日の社会奉仕」と決められているが、金銭的余裕がなく罰金が支払えない市民や社会奉仕の時間的余裕がないことからその場で手軽に済む「棺桶の臨死体験」を選択する違反者が多かったという。

社会奉仕は道路清掃や下水、側溝、ドブなどの清掃が科され、後日指定された日時、場所での従事が求められることになる。

ところがこうした罰則も風紀取締隊の個人的判断に任される部分が多く、男性違反者はその場で腕立て伏せを強制させられたり、違反者が女性や未成年者の場合には大きな声での国歌斉唱や誰もが小学校で習うインドネシアの国家5原則「パンチャシラ」を復唱したりすることが科され、テレビニュースなどはそうした光景を「微笑ましい罰則」などとして伝えていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機

ビジネス

再送米経済「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向

ビジネス

再送MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中