【対論】イスラエルの「ヨルダン川西岸併合」は当然の権利か、危険すぎる暴挙か
THE DEBATE : WEST BANK QUESTION
トランプ以前の仲介者たちは、パレスチナにイスラエルとの平和共存を受け入れさせようとしなかった。代わりに国際社会の非難や支持撤回を心配せずに、イスラエルへの攻撃を継続・強化できると思い込ませた。
パレスチナ側はユダヤ人国家との平和共存に合意する前提として、全ユダヤ人のジュデア・サマリアと東エルサレムからの追放を要求した。オバマ前米政権を含む欧米諸国の政府がそれを支持したことが、和平の実現を不可能にしてきたのだ。
トランプの和平案は、成功の可能性がある初のアメリカによる提案だ。それ以前の案の中核にあった病的な(そして反ユダヤ主義的な)思い違いを拒否しているからだ。トランプ案は、民族の故郷におけるユダヤ人の自決と独立の権利をパレスチナ人が拒否し続けてきたのはイスラエルのせいだという考えを否定している。そしてイスラエルにはジュデア・サマリアを含む全ての民族の故郷において主権を持つ法的・民族的権利があるという事実を受け入れている。
イスラエルの法律をジュデア・サマリアに適用すれば、急拡大しているスンニ派アラブ諸国との関係に支障が出ると、自称専門家は主張する。だが心配は要らない。パレスチナの指導者は連日、アラブ諸国の指導者にトランプ案への支持と良好な対イスラエル関係への興味を捨てさせることができないと嘆いている。
サウジアラビアのジャーナリスト、アブドゥル・ハミド・アル・ガビンはBBCにこう語った。「わが国の世論はイスラエルとの関係正常化を支持しているだけでなく、その多くがパレスチナに背を向けた」
リスク対効果でみる併合の危険な結末
■マイケル・J・コプロウ(イスラエル政策フォーラム政策担当責任者)
イスラエルによるヨルダン川西岸併合はリスクばかり膨大で、報酬がほとんど、あるいは全く存在しない行動の典型だ。併合支持論は勝利を求める心に訴え掛けるが、この勝利は究極的には象徴的なものにすぎず、それを手にするために数々の現実的な問題を生み出すことになる。
併合反対派の間で最も一般的な論点は、外交面の影響に関するものだ。併合に踏み切れば、国連や欧州各国から非難を浴びるのはほぼ確実。場合によってはスンニ派アラブ諸国との対立再燃、1994年に調印されたイスラエル・ヨルダン平和条約の履行停止に発展する可能性がある。
さらに西岸併合は、独立と主権をめぐって、イスラエルとパレスチナ双方の理想を尊重する形で中東問題を解決する道を不可避的に遠ざける。
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