最新記事

アメリカ社会

ツイッターCEO、ベーシックインカム推進団体に300万ドルを寄付

Twitter CEO to Fund Universal Basic Income Experiment in These U.S. Cities

2020年7月13日(月)18時20分
ジェーソン・マードック

「生きているうちに効果を見たい」と寄付の動機を語った43歳のツイッター社CEOドーシー(6月7日、パリのエリゼ宮殿で) Philippe Wojazer-REUTERS

<新型コロナとBLM運動で危機的な格差拡大が明らかになった今、かつては考えられなかったアメリカでベーシックインカムの実験が始まった>

ツイッターのジャック・ドーシー共同創業者兼CEOが300万ドルを寄付しようとしている相手、それはベーシックインカム(最低所得保障)導入を訴えるアメリカの市長たちの団体だ。

ドーシーは7月9日、「所得保証を求める市長の会(以下、市長の会)」に出資すると明らかにした。カリフォルニア州ストックトンの若き市長、マイケル・タブズ(29)が6月に立ち上げた団体だ。

「これは富と所得の格差を埋め、人種や性別による構造的な不平等をなくし、家族のために経済的安定を作り出すのがベーシックインカムだ」と、ドーシーはツイッターで述べた。

市長の会にはこれまでにニューアーク(ニュージャージー州)やアトランタ(ジョージア州)、ロサンゼルス(カリフォルニア州)、セントポール(ミネソタ州)など全米15都市が参加し、ベーシックインカム導入がもたらす恩恵について世間に訴えている。もしこれら15都市でベーシックインカムが導入されれば、700万人以上のアメリカ人の生活に影響を与えることになる。

ベーシックインカムが導入されたあかつきには、月々一定額が個人に直接、支払われることになる。市長の会のウェブサイトによれば「ひも付きでもなければ、代価として労働を求められることもない」給付だ。ロサンゼルスやシアトルなど複数の都市が導入賛成の姿勢を示している。

試験導入も始まった

一部ではすでに試験導入も始まっている。ストックトンでは昨年2月以降、125人の住民に試験的に月々500ドルが給付されており、2021年いっぱい続けられる予定だ。

ミシシッピ州ジャクソンでは、委託を受けた団体が子を持つ黒人女性に対し月に1000ドルを支給してきた。シカゴやニューアーク、アトランタといった都市では役所内にタスクフォースが作られ、ミルウォーキーでは試験導入の計画が練られている。

「人々の懐が温かくなれば家計は安定し、地域経済も活性化する」と、市長の会のウェブサイトには謳われている。

「特に新型コロナウイルスの感染拡大とそれに続く景気後退を受け、ベーシックインカムは一般の消費支出を刺激するとともに州など地方自治体に喉から手が出るほど必要な歳入を生み出し、全米規模の景気回復を促すだろう」

また、ベーシックインカムの原資については、政府系ファンド、もしくは「最も富裕な層に対する税率を20世紀を通じた平均値」にすることを通して得られるとしている。

ドーシーの寄付は、ストックトンでの家庭内暴力や住宅で問題を抱えている人々への支援プログラムで使われると伝えられる。また、それ以外の都市での試験導入に向けた調査・計画にも使われるという。

<参考記事>自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされた黒人の遺体発見が相次ぐ
<参考記事>Twitterのジャック・ドーシーCEOのアカウントが乗っ取られ、トランプも狙われていた

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中