最新記事

新型コロナウイルス

コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?49カ国ランキング

2020年7月21日(火)11時50分
高山 武士(ニッセイ基礎研究所)

【経済被害】

次に「経済被害」については、コロナによって失われたGDPの損失を計算する。この「GDP損失」は各国の実質GDPの水準について「コロナ禍前の想定(ベースライン)」と「コロナ禍後の見通し」をそれぞれ計算した上で、その差額をコロナ禍での経済被害として推計する。

推計の際、ベースラインはコロナ禍前の年末年始に公表された国際機関等の見通しを用いて作成し、コロナ禍後の見通しは、主に6月に入ってから公表された国際機関等の見通しを用いて試算した7。ベースラインとコロナ禍後の具体的な数値については、参考として巻末に記載する(後継図表6)。

なお、被害の推計を2020年のGDP差額に限っており、長期的な経済被害について考慮していない点、コロナ禍以外の要因での成長率変動を取り除いていない点には注意が必要である。

【総合評価】

全体の点数計算にあたっては次のように計算している。

Nissei200721_1.jpg

「コロナ被害」と「経済被害」について、被害の小さい国から被害の大きい国まで好成績順に並べて、1~10点で点数をつける8(高得点がコロナ禍に上手く対応していることを示す)。そして、「コロナ被害」の3項目と「経済損失」の1項目の点数をレーダーチャートにした場合の面積が大きい国を上手く対応している国としてランク付けする。

例えば、日本について評価すると図表1のようになる。感染者数が49か国中4位(4番目に少ない)ので最高点の10点、感染拡大率は22位で6点、致死率は35位で4点、GDP損失は9位で9点となっている。総合点は面積の95点となる。この評価では、「コロナ被害」が3項目あり、「経済被害」が1項目しかないため、「コロナ被害」のウエイトが高めの評価と言える9。

評価結果・ランキング

さて、前節の方法で49か国のコロナ対応を評価してランク順に並べると、図表2のようになる。

総合順位では、台湾、マレーシア、香港、タイ、中国、韓国といった順に高評価となった。「コロナ被害」のウエイトが高いということもあり、感染者数や感染拡大率が低い国が上位を占めている。しかしながら、興味深い点として、上位国のこれらのコロナ被害が小さい国は、GDP損失も小さい傾向にあり、「経済被害」のウエイトを少し高めても順位の変動がほとんどないことを補足しておく。

また、他媒体での評価と比較するとPOLITICOで評価の高い中国は、本稿でも「経済被害」で高得点を取っているが、致死率の高さが順位を低下させる要因となった。

エコノミスト誌で評価の高いニュージーランドは経済への影響が大きく、Deep Knowledge Groupで評価の高いスイス、ドイツ、イスラエルは実際の感染者や死亡者がランキング上位国と比較して多かったため、順位が下がっている。エコノミスト誌やDeep Knowledge Groupはリスクや安全性といった「能力」を評価しているが、本稿では、今後の見込みも含んだ「結果」に重点を置いており、必ずしもリスクの低い国で感染が抑制されているわけではないという状況が反映された判定となった。

Nissei200721_2.jpg

――――――――――
7 点数は、49か国を成績の良い順に10グループ(5か国ずつ、最終グループは4か国)に分けて、最良グループが10点、次のグループが9点、...、最も成績の悪いグループが1点として付けた。
8 当研究所でも見通しを作成している国がいくつかあるが、今回は基本的に国際機関の見通しを活用している。
9 レーダーチャートの面積での点数付けは、ひとつの項目で秀でた点数を取るよりも、全項目でバランスの良い点数を取ることにウエイトを置いた点数付けでもある。例えば、4項目のうち3項目で1点、残りの1項目で10点の場合、総合点数は面積の11点となる。一方で、すべての項目で3点を取った場合、総合点数は18点となって後者の評価の方が高い。単純な足し算での合計点を出すと前者は合計13点、後者は合計12点で前者の総合点の方が高くなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

東南アジアの洪水、死者161人に 救助・復旧活動急

ワールド

再び3割超の公債依存、「高市財政」で暗転 25年度

ビジネス

ミネベアミツミ、ボーイングの認定サプライヤーに登録

ビジネス

野村HD、オープンAIと戦略連携開始 収益機会を創
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中