2度目のロックダウンで米企業10兆ドルの「債務爆弾」が破裂する
A $10 Trillion Corporate Debt Bomb is Waiting to Explode the U.S. Economy
パンデミックで収益が激減し、運転資金が枯渇した企業は、社債をどんどん発行してきた。今年に入ってからの投資適格級の社債発行額は、既に2019年の1年分を上回っている。
だが発行ペースは鈍化している。金融情報サービスのリフィニティブによると、7月初め以降に米企業が債券市場で調達した資金は2590億ドル。6月の5290億ドルの半分にも満たない。
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のジェフ・フランク教授(経済学)は、今の危機を供給サイドの危機とみている。にもかかわらず米政府とFRBはとっさの対応として需要喚起策に走り、「甚だしい過剰投資」を助長してきたという。
成人1人当たり1200ドルの給付金や、従業員を雇用し続ける中小企業に支払われる給与補償の返済免除、FRBのジャンク債購入などだ。
「政府とFRBはパンデミックの初期段階で持てる手段を使い尽くした。FRBのバランスシートは既に4兆ドルから7兆ドルに膨張している。金融危機の全体を通じて増えた額に匹敵する大幅な膨張だ」と、フランクは言う。
腰を据えた支援策を
法律サービス会社エピックによれば、1月から6月までに連邦破産法11条の適用を申請した米企業は3604社で、年率にして26%増加した。資金繰りに苦しみつつ、何とか期限までに債務を返済しようとしている企業はその何十倍、何百倍にも上るだろう。
こうした未曾有の危機では、何百万人ものアメリカ人の生活は借り入れの期間が長いか短いかにかかっている。この状況では、民間の貸し手は個人向けにも企業向けにも融資しようとしない。既存の融資や信用供与枠も契約によっては借り換えが可能だろうが、新しく貸そうとはしないだろう。
「理にかなった政策は、資金を必要としている人や企業を助けることだ。民間の与信が事実上止まっている間、資金さえあれば将来的に成長できる会社が、つなぎ融資で資金不足を乗り越えられるようにすることだ」と、フランクは言う。「ただし、今回の資金不足は数カ月単位ではなく何年も続く可能性がある。短い融資では意味がない」
政府とFRBによる直接融資が最善の方法だと、フランクは言う。各企業への家賃支援も欠かせない。
「FRBが中小企業向けに開始した支援制度は、民間の銀行も融資に加わって一定のリスクを負う設計だが、報告によれば、この条件のせいでほとんど融資が行われていない」という。
FRBはまた、企業や地方自治体などより幅広い経済を対象とした2兆3000億ドル規模の緊急資金供給策を発表。ジャンク債についても買い入れを行うことを決定した。7月28日にはスティーブン・ムニューシン財務長官が、企業や地方自治体、個人を対象とした融資の期限を、当初の9月30日から年末まで延長すると発表した。
だがフランクは、FRBによるジャンク債の買い入れが市場経済にひずみをもたらしていると指摘する。「問題は、今はリスクが計算できない点にある」
新型コロナウイルスの感染再拡大がどのような結果を招くかは未知数で、現在の株式市場と社債市場はまだ「第2波」の影響を織り込んでいない。
デービッド・ガリーは、もしも2度目のロックダウンに追い込まれれば、「多額の負債を抱える企業のキャッシュフローに壊滅的なダメージを与えるだろう」と語った。「数十、場合によっては数百もの企業が利払いの繰り延べや免除を求めたり、あるいは債務不履行(デフォルト)に陥る可能性もある」
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