最新記事

中国

北京コロナ第二波はなぜ起きたのか?

2020年6月17日(水)11時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●いま北京では、たとえば家庭内の集団感染とか病院内の集団感染といった現象は見られないので、北京政府が直ちに「非常時」宣言をするなど応急措置を取っているので、大きな流行の爆発にはならないだろうと期待している。

●今後3日間の変動で、北京がどうなっていくのか、おおよその予測が出来るようになる。

武漢のウイルスより感染力が高い?

一方、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は6月15日に「武漢のウイルス専門家:北京のコロナ感染力は武漢よりも高い しかし中国の防疫経験は既に豊富だ」という見出しで、武漢大学医学部ウイルス研究所の楊占秋氏の見解を披露している。

それによれば、「武漢華南海鮮市場では昨年12月末から今年1月17日までに62人の感染者が出たのに対して、今般の北京新発地市場では4日間で79人の感染者が出ているので、北京の市場で見つかったウイルスは武漢の市場で見つかったウイルスに比べて感染力が高い」とのこと。

また、北京の場合、冷凍食品自身がウイルスを宿すことはあり得ないので、冷凍食品などを扱う「人」がコロナに罹っており、その人が食品を扱ったことによって食品の表面にウイルスが付着していたという可能性が高いとも解説している。

したがって、輸入先がコロナ感染地域であるか否かを確認しなければならないともいう。

さらに環球時報は北京市疾病センター新型肺炎防疫専門チームのメンバーである楊鵬が、「このウイルスはヨーロッパから来ており、輸入品と関係すると見られる」と話していることも報道している。

一党支配体制を維持するために

中国は民主主義国家と違い、選挙によって政権与党が選ばれるわけではない。

ひとたびコロナ防疫に失敗しようものなら、中国共産党による一党支配体制が揺らぐ。特に首都北京だけは守ってきたのに、その北京が発生源となって第二波が襲ってきたら、一党支配体制も危うくなる。

だからその戒厳態勢ぶりは尋常ではない。市場に行った可能性のある者すべてにPCR検査を行い、豊台区に隣接する街道すべての地区の危険レベルを上げ、市場の責任者は紀律検査委員会によって更迭された。

ポストコロナの世界覇権に関してアメリカと張り合っている中国としては、何としてもコロナ感染の再爆発を食い止めなければならないという焦りがある。

もっとも、日本にとっても「まだ感染が収まってない国からの輸入品に関しても十分な留意が必要である」ことを北京の第二波は教えてくれているとも言える。中国の専門家の分析がどれくらい妥当であるかはさておき、少なくとも日本国民を守るためには、あらゆる側面からの警戒は怠らない方がいいだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

Endo_Tahara_book.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』(遠藤誉・田原総一朗、実業之日本社)、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中