最新記事

米暴動

トランプの着々と進む「戦争」準備、ワシントン一帯に兵を配備

Exclusive: Trump Moves Military Forces to Near-Wartime Alert Level in D.C.

2020年6月3日(水)17時50分
ウィリアム・アーキン(元陸軍情報分析官)

フィラデルフィア市の秩序維持に出動したペンシルベニア州の州兵(2020年6月2日)Joshua Roberts‐REUTERS

<全米に広がる暴動を制圧するためなら軍の派遣も辞さない、と宣言したトランプは、すでにホワイトハウスがあるワシントン一帯に近隣の州兵部隊を集め、連邦政府の指揮下に入れている>

米国防総省はワシントン一帯の米軍部隊と基地に、テロやその他破壊活動の標的となる危険度が高まったという警報を発令した。これは、危険度を4段階で表す指標で、現在は危険度が2番目に高い段階にあるという。

ワシントン、メリーランド州、バージニア州にこの警報が発令されたのは、2日朝7時30分。だが、それまでの24時間というもの、ホワイトハウスからは次々に混乱し、どんどん内容が変わる声明と警告が出されていた。この間、ドナルド・トランプ大統領は、連邦政府の軍事介入を辞さない構えで州知事らを脅し、連邦軍司令官としてマーク・ミリー統合参謀本部議長を任命した。この人事には法的には問題がある。ミリー議長は軍司令官ではなく、大統領の軍事顧問だからだ。

「トランプ大統領の一見独裁的なやり方と、それが米軍指導部の判断に与える影響について、深刻な懸念を抱いている」と、下院軍事委員会のアダム・スミス委員長(民主党)は2日、語った。法の限界を超えた軍の使用は許されない。だが私には、トランプ大統領がそれを理解しているとは思えない」

ワシントン一帯の州兵を動員

白人警察官の暴行で黒人のジョージ・フロイドが死亡した事件をきっかけに全米に広がった抗議デモと暴動への対応策として、トランプは1日、ワシントン(コロンビア特別区)の州兵部隊を連邦軍として動員した。連邦政府による州兵の動員はこの部隊が最初だ。

ワシントンの州兵部隊は、あまり知られていない首都地域共同タスクフォース (JTF-NCR) という司令部の指揮下にある。もともとは、新型コロナウイルスに対する政府の緊急計画を秘密裏に継続するために、今年3月に設置された司令部だ。

共同タスクフォースを指揮するのは、陸軍のマジ・オマール・ジョーンズ将軍で、その上司にあたるのが、コロラド州コロラドスプリングスに本部を置く米北方軍(NORTHCOM)のテレンス・オショーンネシー空軍司令官。そして、オショーンネシーは国防長官を通じて大統領に指示を仰ぐ立場にある。

連邦に動員されたのは、ワシントンの州兵だけではない。隣接するウエストバージニア州の州兵部隊も1日の夜、連邦命令でワシントンン地域に組み込まれた。

そして2日の午前0時過ぎ、ニューヨーク州フォートドラムとカンザス州フォートライリーから飛び立った輸送機が、メリーランド州南部のアンドリュース空軍基地に到着した。飛行機から降り立った軍事警察官と歩兵たちは、連邦政府の建物と基地の防衛の任務に就くことになっていた。ノースカロライナ州フォートフラッグ出身の現役軍事警察官約250人は、真夜中までにワシントンにある軍の各基地に配備された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人・失業率4.6

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中