危機に直面して自分を責める時代はもう終わりにしよう
日本や韓国は「内向型」の逸脱行為(自殺)が圧倒的に多い AH86/iStock.
<新型コロナウイルスによる深刻な経済低迷で、失業を苦にして自殺する人の増加が懸念されるが......>
新型コロナウイルスの影響で、職を失う人が増えたらどうなるか。日本で懸念されるのは自殺の増加だ。失業率と自殺率の長期推移を描くと、気味が悪いくらいシンクロしている(拙稿「失業率とシンクロする自殺率の推移」本サイト、2019年1月9日)。
関係を定式化すると、失業率6%で年間自殺者3万人、10%で4万人、15%まで高まると5万人を越える事態が想定される。寒気のする事態だが、各地で雇い止めが起きていることを思うと、あり得ないことではない。
生活苦のあまり他人の財産を強奪する、自暴自棄になって無差別大量殺人に走るなど、外向型の(他人に攻撃が向かう)犯罪の増加も怖い。先月、コロナの影響で失職し、空腹に耐えかねてスーパーに押し入った高齢男性のニュースが報じられた。
失業率は強盗認知率とも相関している。<図1>は、2つの指標のカーブを描いたものだ。失業率は労働力人口に占める失業者の割合で、強盗認知率は人口10万人あたりの強盗事件認知件数をいう。
70年代半ばからのトレンドだが、カーブの形が似ている。90年代の不況期に激増し、景気回復と共に下がる傾向はほぼシンクロする。1975~2018年の44年間のデータで相関係数を出すと、+0.849にもなる。
「失業→強盗」という因果関係を思わせる事実だ。失職して、どうしようもない生活苦に陥った。頼れる人もいない。こういう極限の危機状況に置かれ、規範から外れた行いをせざるを得ない時、人はどういう行動をとるか。大きく2つのベクトルがあり、自殺するか、他人の財産や権利を侵害してでも生き延びるか、という2つに分かれる。前者は内向型、後者は外向型の逸脱行動だ。