最新記事

中国

ローテク日本が休校・休業コロナ対策を困難に

2020年5月5日(火)21時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

都内の象牙印鑑工場で(写真は2016年11月28日、東京) Issei Kato-REUTERS

IT先進国であるはずの日本の日常は、実はローテクに満ちている。休校時のオンライン授業やオンライン医療の立ち遅れだけでなく、ハンコ文化がテレワークを阻んでいる。米メディアの報道を引用しながら考察する。

ロサンゼルス・タイムズがlow-tech Japanを批判

4月26日のロサンゼルス・タイムズは"In low-tech Japan, working from home amid coronavirus outbreak is a challenge"(コロナ真っ只中の在宅勤務は、ローテク日本にとってチャレンジだ)という論評を掲載した。チャレンジという言葉を使ってはいるが、これは「日本は努力しなければならないこと」というニュアンスを込めた「日本批判」。よく言えば日本への警鐘といったところか。情報源はアメリカのAP通信(Associated Press)だ。

それによれば日本企業は一見、超近代的な印象を与えるが、実際はその逆で、企業の中では前近代的なローテクがはびこっていると指摘。その最たるものがhanko(ハンコ)文化だという。

記事はイギリスのマーケット調査などグローバルなデータ収集と分析の専門会社であるYouGoV社の調査結果を以下のように引用している。

――日本人のわずか18%しか遠距離による作業(授業や企業業務)を遂行することができない。それでいて日本人の80%がコロナ感染を恐れている。

インドでは70%が遠隔作業をこなし、アメリカでは30%が実施している。(ここまで引用。)

アメリカが30%というのは、遠隔作業ができないのではなく、外出禁止など無視して平気で外に出るからだろう。

記事はまた、役員研修やカバナンス研修&コンサルティングを行う会社役員育成機構の代表理事であるNicholas Benes(ニコラス・ベネシュ)氏の「私はずっと日本のテレワークに関して助言を行ってきたが、日本人の関心は驚くほどに低い」というコメントを紹介している。ベネシュ氏は続けて以下のように述べているという。

――日本が最新のITシステムに欠けているということは、日本が柔軟性のある業務や遠隔業務の育成において世界から落後していくことを意味している。テレワークは管理者がより多くの決定権を従業員に与えなければならない。しかし日本はface to faceという、実際に対面して「空気を読む」という文化から抜け出すことができない。また結果だけではなく、その結果に至ったプロセスを(人事などにおける)評価対象としている。これでは労働効率を低めるばかりだ。実際の「執務室」のない「オフィス」は、日本では非常に少ないのである。(ここまで引用。)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご

ワールド

中国、EU産ブランデーの反ダンピング調査を再延長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中