最新記事

感染経路

おしゃべりで飛んだ飛沫は空中に8~14分漂う

2020年5月29日(金)17時55分
松丸さとみ

くしゃみはもちろんだが、通常のおしゃべりでも飛沫が飛ぶ pabst_ell-iStock

<咳やくしゃみをしたときに出る飛沫が飛ぶことは知られているが、通常のおしゃべりでも飛沫が飛ぶことがわかった......>

無症状感染者との会話が感染経路に?

おしゃべりをしたとき、口から飛び出した飛沫は、その後空中に8分以上漂っていることが、最新の実験により明らかになった。米ペンシルベニア大学や米国立衛生研究所(NIH)の研究者らが行ったもので、結果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されている。

新型コロナウイルスなどの呼吸器系ウイルスは、咳やくしゃみをしたときに出る飛沫から感染することは、多くの人が知っている。しかし研究者らは、通常のおしゃべりでも飛沫が飛ぶことはそこまで知られていないと指摘。また、新型コロナウイルスの無症状感染者が会話をしていたときに飛んだ飛沫が、感染経路になったと考えられるケースも増えている、と説明している。

そこで研究チームは、レーザー光散乱法を使い、人が話したときに口から出る小さな飛沫がどのくらいの時間、空中に漂うかを調べた。実験では、外から空気が入らない箱を作り、そこに向かって男性に25秒間、大声で話してもらった。その際、飛沫を箱内で均等に拡散させるために、話している間と話し終わってから10秒間、箱内に設置した扇風機を回した。

この際、大声で話す人は、「健康でいる」(stay healthy)という言葉を繰り返した。このフレーズを選んだ理由は、「healthy」の「th」の音が、話す際に飛沫を発生させやすい音だからだという。

ウイルスを含む飛沫1000粒以上が8分以上漂う

研究者らは、大声で話した際に出た飛沫の数を計測。さらに、4月に英科学誌ネイチャーに掲載された、コロナウイルス感染者の唾液に含まれる平均的なウイルスの量を示した論文をもとに、このときに飛んだ飛沫にどのくらいのウイルス粒子が存在することになるかを計算した。そこから、ウイルスに感染している人が大声で話した場合、ウイルス粒子が含まれる飛沫は、1分あたり1000粒以上に達すると推測した。

こうした飛沫は、口から飛び出た後、空中に8~14分の間、漂うことが分かった。もしそこにいる誰かがそれを吸い込んだ場合、飛沫に含まれるウイルスから感染する可能性があると研究チームは指摘。そのため、通常の会話でも、閉め切った場所であればウイルスに感染する可能性は大いにあるとしている。

ただし研究チームは今回の数値について、かなり保守的に出していると説明している。実際には、前述の4月の実験で示された平均的な数値よりも感染力が高い人もおり、その場合、ウイルス粒子を含む飛沫は、1分あたり10万粒以上に及ぶ可能性もあるとしている。

また、実験は空調や室温の変化を考慮していない。そのため、実際の生活の状況において、かならずしも同じ結果になるわけではないと研究チームは説明している。

とはいえ、マサチューセッツ工科大学(MIT)のテクノロジー誌論文は、今回の実験で分かったもっとも重要な点は、自宅を出るときは、たとえどのような状況であれマスクをすることだと警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

AI端半導体「ブラックウェル」対中販売、技術進化な

ワールド

チェイニー元米副大統領が死去、84歳 イラク侵攻主

ビジネス

リーブス英財務相、広範な増税示唆 緊縮財政は回避へ

ワールド

プーチン氏、レアアース採掘計画と中朝国境の物流施設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中