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感染症

「新型コロナ感染長期化」という確実な将来 3つのデータが教える私たちのとるべき対策

2020年5月1日(金)18時15分
野村 明弘(東洋経済 解説部コラムニスト) *東洋経済オンラインからの転載

よみがえる基本再生産数

1つには、第2波、第3波の到来は不可避であり、長期化は免れないということだ。先述のように接触削減などの対策により、実効再生産数を基本再生産数(以下、新型コロナは2.5と想定)より引き下げることはできる。

実際、最近のヨーロッパやアメリカでは、ロックダウン(都市封鎖)の効果で新規感染者数が減少してきた。これは数理モデル上、実効再生産数が1未満になったことを示唆する。

長引く封鎖は経済や市民の生活・メンタルに大打撃を与えるため、欧米諸国の政府は、対策を緩和する方向を打ち出している。では、実際に対策を緩和するとどうなるか。人工的に低下させてきた実効再生産数は再び、基本再生産数の2.5に向けて上昇するのは確実である。

欧米に遅れる形で日本でも4月7日、東京など7都府県を対象に政府が緊急事態宣言を発令し、その後対象を全国に広げた。足下で新規感染者が着実に減少していくかはまだ予断を許さないが、仮にそうなったとしても、ゴールデンウィーク後に外出や休業の自粛要請をやめれば、再び感染拡大に戻ることは必至だ。

波状的に感染拡大が起こることは、過去のパンデミック(世界的流行)でもあった。1918年に流行が始まったスペインインフルエンザでは、ウイルスの変異による重症化もあり、第2波や第3波の被害のほうが大きかった。同じことは新型コロナでも起こりうると考えたほうがよいだろう。

それでは、結局、集団免疫率に達するまで感染は止まらないのであれば、接触削減などの対策を行うことは無駄であり、経済などへの打撃を考えれば、やめたほうがよいのだろうか。そう考えるのは短絡的だ。理由を見ていこう。

それでも実効再生産数を下げる意味

まず、対策によって実効再生産数を低下させれば、集団免疫率も下げられることを忘れるべきではない。結果、死者数も抑制できるのは言うまでもない。加えて重要なのは、実効再生産数が低くなればなるほど、新規感染者数の山は低く、カーブも後ろずれして緩やかになることだ。その分、時間当たりに発生する重症患者数を抑制することができ、医療崩壊を防ぐために極めて重要な手立てになる。海外の一部であったように医療崩壊が起きれば、新型コロナの致死率は跳ね上がってしまう。

以上のことを踏まえて現在、先進諸国の多くが採る戦略は、接触削減などの対策で実効再生産数を抑制して医療崩壊を防ぎながら、最終的にはワクチンの実用化により人工的に集団免疫を達成しようというものだ。もともと集団免疫率という数字は、人口の何割の人がワクチン接種を受ければ、集団免疫が成立するかを計算するために使われることが多い。重症化を防げる治療薬の実用化も重要な分岐点となるのは言うまでもない。

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