最新記事

日本社会

所得による日本の大学進学格差は、現状でも実質的な違法状態

2020年4月30日(木)14時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

大学進学の機会は、実際の能力よりも経済力や居住地域に左右されている urbancow/iStock.

<全国の都道府県別の大学進学率を見てみると、東京の73%と岩手の38%では約2倍の格差が付いている>

大学入試改革が物議をかもしているが、大学入試とは、大学教育を受けるに足る学力があるかどうかを判定するものだ。常識的に考えれば、学力水準が高い集団の大学進学率が高いように思えるが、現実はそうではない。

都道府県別の大学進学率を見るとどうだろう。各県の高校出身の大学入学者数を、推定18歳人口(3年前の中学校、中等教育前期課程卒業者数)で割ってみると、東京の73.3%から岩手の38.1%まで、かなりの開きがある(2019年春)。倍近い開きで、日本国内でこれだけの格差があるのかと驚かされる。

2019年春に大学に入った世代は、2012年に小学校6年生だったことになる。当時の公立小学校6年生の算数学力と関連付けてみると、<図1>のようになる。横軸に算数Bの平均正答率、縦軸に大学進学率をとった座標上に、47都道府県を配置したグラフだ。

data200430-chart01.png

2つの指標の間には、おおむねプラスの相関関係が認められる。しかし傾向から外れた県もあり、秋田は学力首位にもかかわらず大学進学率は低い。北陸の3県も学力は高いが、大学進学率は全国平均(点線)に達していない。

能力とは別の要因が働いている。まず考えられるのは経済力だ。大学教育を受けるには多額の費用がかかるが。親世代(45~54歳)の有配偶男性の平均所得を出すと、東京の761万円に対して秋田は489万円しかない(総務省『就業構造基本調査』2017年)。地方では自宅から通える大学が少ない(ない)ので、下宿の費用も加わる。家庭の所得が低いのに、学費と下宿費のダブルの負担を強いられる。能力や志があっても、大学進学を断念する生徒は少なくないだろう。地方に埋もれた才能の存在を感じさせる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ、EUに凍結ロシア資産活用の融資承認を改

ワールド

米韓軍事演習は「武力」による北朝鮮抑止が狙い=KC

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ

ワールド

ローマ教皇、世界の紛争多発憂慮し平和訴え 初外遊先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中