最新記事

中国

ウイルス発生源、欧米学者が突然変異説:武漢発生源という証拠なし?

2020年4月16日(木)11時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2019新型コロナウイルス(2019-nCoV) 顕微鏡画像 CDC/Hannah A Bullock and Azaibi Tamin/Handout via REUTERS

欧米学者が米学術誌に新型コロナウイルスのルーツに関するゲノム分析結果を発表した。最初のウイルスA型は米国に多く、武漢はB型でA型からの突然変異とのこと。米国と発生源の責任を争っている中国は狂喜か?

新型コロナウイルスは突然変異を通して三つのパターンを形成

イギリスのケンブリッジ大学のピーター・フォースター(Peter Forster)博士を筆頭とする欧米の研究者グループが、2020年4月8日にアメリカの学術誌PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America=米国科学アカデミー紀要)に"Phylogenetic network analysis of SARS-CoV-2 genomes"(新型コロナウイルス・ゲノムの系統発生学的ネットワーク分析)というタイトルの論文(以後、ピーター論文)を発表した。専門用語を使うと何のことだか分からなくなるので、一応丹念に読解し、消化した上で、平易な言葉に置き換えて以下に概要をご紹介する。筆者の説明も加える。

1.世界各地から集めたヒト新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)の全ゲノム160個の系統ネットワーク解析をコンピュータ・シミレーションで行ったところ、アミノ酸の変化によって区別される3つの中心的な突然変異体があることが分かった。

使用したサンプルは国別に以下のようになっている。

endo20200416085901.jpg

これは鳥インフルエンザ・データ共有グローバル・イニシアティブ(GISAID)(ドイツがホスト)のサイトに集められているデータを基にしている。

2.ピーター論文に掲載されている新型コロナウイルス起源と突然変異マップを以下に示す。

endo20200416085902.jpg

いずれもコウモリに宿るウイルス(右下の黒丸)から発生し、「ヒト」を宿主とし始めたものだが、その最初のウイルスはA型で、A型は突然変異してB型に、そしてB型がさらに突然変異してC型になった。

マップの真ん中に黄色(中国)とオレンジ色(東アジア)の大きな円があるが、これは武漢を中心としたB型で、東アジア地域に多く見られる。円の右上にBという文字がある通り、大きな円を中心とした周辺は「B型グループ」である。

ではB型の「親」であるA型はどのようにして「ヒト」に宿ったのかというと、これは3月10日付けコラム「新型コロナ日本感染ルーツとウイルスの種類:中国のゲノム分析から」で述べたように、コウモリから正体不明の動物(センザンコウと言われている)を介して「ヒト」に宿ったと考えられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中