最新記事

中国

ウイルス発生源、欧米学者が突然変異説:武漢発生源という証拠なし?

2020年4月16日(木)11時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

論文では、ウイルスには宿主を選ぶ傾向があり、A型はもともと雲南省にいたらしいコウモリを起源とするウイルス(BAT)が何らかの形で武漢に移動し「ヒト」に宿ってそこで繁殖していったのだが、どうやらアジア人には(古い流れにおける免疫環境など複雑な話があり)感染しにくい。欧米系の「ヒト」を宿主とすることを好むらしい。だから、武漢にいたアメリカ人に感染し、そのアメリカ人は他国を経由しながらアメリカに戻り、アメリカで感染拡大を起こしていったとしている。

武漢では、「A型のままでは快適な宿主がいないので」、「B型に突然変異」して「快適な宿主である武漢人の間で肺炎として爆発的に感染を拡大」していった。

A型をアメリカに持ち帰ったアメリカ人により、A型ウイルスはアメリカで快適な繁殖環境を得て、新型コロナウイルスA型の肺炎を爆発的に拡大していった。

B型はヨーロッパ方面に移る時に、ヨーロッパ人に適応したC型に突然変異し、ヨーロッパで猛威を振るっている。A型とC型は互いに行き来し、宿主の相性が良く、アメリカ人はヨーロッパのC型をも受け入れている。(筆者注:論文には書いてないが、その結果、アメリカでの感染爆発がより激しくなったという要素もあるように感ぜられる。あくまでも素人の推測だが、専門家には是非とも解明して頂きたい。)

互いに複雑な相関があり、きっちり分けるわけにはいかないが、大きな傾向として、A型とC型は東アジア以外の地域、つまり欧米人にかなりの割合で見られ、B型は中国など東アジアで最も多く見られる。日本もB型だ。

3.A型を持ったアメリカ人 

くり返すが、武漢で爆発的に感染拡大した時に、武漢にはA型肺炎患者はほぼ見られず、むしろ武漢滞在歴のあるアメリカ人がA型ウイルスを所有し、アメリカで感染拡大させている。これは3月10日付けコラム「新型コロナ日本感染ルーツとウイルスの種類:中国のゲノム分析から」で触れた例と類似している。おそらく同一人物に関する解析だろう。

となると、このアメリカ人の存在がウイルス系統樹においても、また米中の間で争われている「ウイルス起源説」に関しても、非常に大きな役割を果たすことになろう。

何と言っても突然変異の順番から言えば、コウモリを起源としたウイルスの突然変異の推移は

「BAT(コウモリ)→A型(かなりの割合がアメリカとオーストラリア)→B型(主に東アジア)→C型(主に欧州)」

となっているのだから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半でほぼ横ばい、日銀早期

ビジネス

中国万科の社債急落、政府支援巡り懸念再燃 上場債売

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛

ビジネス

インフレ基調指標、10月の刈り込み平均値は前年比2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中