「火星探査」で学んだ隔離生活を楽しむ9つのコツ
Living Life at a Distance
火星であれ地球であれ隔離された状態で過ごすつらさは同じだ PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTO BY EVGENIY SHKOLENKO/ISTOCK/GETTY IMAGES PLUS
<新型コロナ対策にも応用可能──「火星」に住む実験に参加して分かった閉じ籠もり生活の不安と不満の解消法>
2013年、私は荷造りをしてハワイの活火山マウナロアにあるドーム型施設に入った。NASAが支援する模擬火星探査ミッション「HISEAS」に参加するためだ。溶岩原に囲まれた火星そっくりの環境で4カ月間、6人の「クルー」が隔離生活を体験。物理的、心理的、社会的影響を調べて将来の火星探査に役立てようというわけだ。
家族や友人と離れ、交信にも時間がかかる。食事も新鮮な果物や野菜はなく、保存の利く食品だけ。外に出る際は必ず「宇宙服」(といっても政府払い下げのぶかぶかの防護服だが)を着用しなければならなかった。
世界には、何カ月も隔離(缶詰め)生活を強いられる人がたくさんいる。慢性病患者、障害者、受刑者、新米ママ、大学院生、在宅勤務のフリーランス......。そして今は、新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けて、多くの人が外出自粛を求められている。
隔離生活がつらいのは宇宙でも同じ。2年半の火星探査ミッションで宇宙飛行士はどんな問題に直面するのか。彼らがそれに対処するのを、どう支援すればいいか。こうした問題を慎重に検討した上でクルーを選び、計画を立てないと、ミッションが水の泡になりかねない。
模擬探査と新型コロナ対策としての隔離生活の最大の違いの1つは、不確実さだ。世界がいま直面している状況は急速に変化している。外出自粛ムードが広がり、いつまで続くか誰も分からない。一方、模擬探査は最初から期間が決まっていた。私たちは節目ごとにお祝いを計画し、「地球に帰還する日」を指折り数えて待つことができた。
それでも参考にできる点もあるはずだ。私たちクルーの経験を基に、隔離生活を乗り切るヒントを紹介しよう。
■食事を楽しむ
保存の利く食品をストックしておくのはいいことだ。「火星」の食事は常温保存かフリーズドライか乾燥食品ばかりだったが、工夫次第でおいしくできた。みんなで新しいレシピに挑戦し、節目や仲間の誕生日にはコース料理でお祝いして、単調な毎日に変化をつけることができた。
食べてほっとする味だけでなく、普段は口にしないような新しい味にも挑戦を。新しいレシピも探してみよう。食事の時間を人と触れ合い、新しい経験を楽しみ、安らぎを見いだす時間にしよう。