最新記事

新型コロナウイルス

コロナ探知犬の訓練開始へ、検査対象絞り込みで検査削減の切り札に?

2020年4月8日(水)16時30分
松丸さとみ

新型コロナウイルスを探知する犬の訓練がはじまった...... London School of Hygiene and Tropical Medicine/Medical Detection Dogs

<病気にかかっている人が発するにおいを、犬が嗅ぎ分けることで病気に罹患している人を見つけ出すことができるという。新型コロナウイルスを探知する犬の訓練がはじまった......>

対象者に負担をかけず検査が可能なコロナ探知犬

犬はその鋭い嗅覚から、がんやマラリアなど、ヒトの病気を検知できることが知られている。世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスに感染しているか否かを犬が検知できるよう、英国では間もなく、訓練が始まるもようだ。慈善事業団体メディカル・ディテクション・ドッグスが明らかにした。

同団体によると、訓練は、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)とダラム大学との協力によって行う。犬がマラリアを検知できることを証明したこともあるチームだ。

メディカル・ディテクション・ドッグスは、病気にはそれぞれ特有のにおいがあると考えている。そのため、病気にかかっている人が発するにおいを、犬の嗅覚により嗅ぎ分けることで、特定の病気に罹患している人を見つけ出すことができるというのだ。このような犬は、「医療探知犬」または「生体探知犬」と呼ばれる。

メディカル・ディテクション・ドッグスはこれまで、がん、パーキンソン病、バクテリアの感染症などにかかっている人を見つけるための犬の訓練も行ってきた。「COVID-19犬」と命名された、新型コロナウイルスを探知する犬も、他の病気に向けた訓練同様、複数用意されたサンプルを嗅ぎ分け、目的のものが入ったサンプルを見つけた時に知らせる。また、肌の温度の微妙な変化も感知できるため、発熱している人を見つけることもできるという。

空港などで感染者見極め、検査対象を効率的に絞り込む

メディカル・ディテクション・ドッグスは、6週間後には犬が探知できるようになっているよう、集中的な訓練を行う予定だとしている。医療探知犬で新型コロナウイルスを検知できるようになれば、対象者に負担をかけない方法で、迅速に、感染している可能性のある人を特定できるようになる。そのため、空港など大勢が行き交う場所に最適だ。

同団体の共同創業者クレア・ゲスト博士は発表文の中で、コロナ探知犬なら、感染しつつ無症状である人の探知も可能だと話す。検査対象を絞り込むことができるため、NHS(英国の国営医療制度)の限りある検査リソースを、本当に必要なところだけに使うことができるとしている。

ゲスト博士は、犬が新型コロナウイルスを探知できるか否かについては自信があるとしつつ、訓練にあたり、いかに安全に患者からウイルスのにおいを採取し、犬に嗅ぐよう提示できるかを模索中だと説明している。

LSHTMのジェームズ・ローガン教授は、マラリアの探知犬を訓練した際には、世界保健機関(WHO)が定める診断基準よりも高い精度で、マラリア感染者をにおいで特定できたと説明。新型コロナウイルスのような呼吸器系の病気では、ヒトの体臭が変化することが分かっており、犬がこれを探知できる可能性は非常に高いと自信をのぞかせる。探知犬による診断が可能になれば、近い将来、新型コロナウイルス感染症への対応に大改革をもたらすことができると話した。

英政府の発表によると、同国では4月7日の時点で感染者数は5万1608人、死亡者数は5373人に達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中