最新記事
新型コロナウイルス

新型コロナに「脳が壊死」する合併症の可能性

Woman with COVID-19 May Have Developed Rare Brain Disease

2020年4月3日(金)14時45分
カシュミラ・ガンダー

MRI検査の結果、女性患者の脳から損傷が見つかった(写真はイメージ) akesak/iStock.

<デトロイトで58歳女性の新型コロナ患者に壊死性脳症の症状が......免疫機能が過剰反応を起こす「サイトカインストーム」が原因か>

米ミシガン州デトロイトで入院中の女性が、新型コロナウイルスによるものと見られる、脳が壊死する症状になっていることが分かった。非常にまれな症状のため、新型コロナが直接の原因かどうかははっきりしないが、合併症の可能性があるため担当の医師らは患者の治療にあたる他の医師に注意を呼びかけている。

3月31日に放射線医学誌『ラジオロジー』の症例報告として掲載されたのは、新型コロナウイルスに感染した58歳の女性患者で、脳損傷を引き起こすまれな症状「急性壊死性出血性脳症」と診断された。報告した医療チームによると、この症状は過去の感染症の関連の症例はあるが、新型コロナウイルスでは初めてのケースだという。

女性患者の診断にあたったデトロイトの医療団体「ヘンリー・フォード・ヘルスシステム」の神経科医エリッサ・フォーリーによると、患者は当初、発熱、咳、筋肉の痛みを訴えていた。しかし3月19日になって症状が悪化し、パニック状態、方向感覚の欠如、意識レベルの低下といった症状が出たため救急搬送された。

脳のMRI検査の結果、意識や感覚、記憶の機能をつかさどる部位に損傷が見つかった。

サイトカインストームが原因か

担当した医療チームは「壊死性脳症」について、特に子供のインフルエンザなどの感染症で「まれに見られる合併症」だと説明している。免疫機能の過剰反応によって全身がダメージを受ける「サイトカインストーム」が原因と見られている。今回のケースは、これによって「脳の毛細血管が損傷を受けた」とチームは見ている。

報告によると、新型コロナウイルスの患者の一部がサイトカインストームを引き起こしていることを示す症例が増えてきているという。

フォーリーは、「新型コロナの患者を治療する医療従事者にとって重要な発見だ。深刻な神経症状が見られる患者にどのような治療を施すか、判断する材料になる。この合併症は、重症肺炎の症状と同様に危険性が高い」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ビジネス

タイ中銀、バーツの変動抑制へ「大規模介入」 資本流

ワールド

防衛省、川重を2カ月半指名停止 潜水艦エンジンで検
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中