最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナ、見えない先行き──どうなれば「小康状態」や「終息」といえるのか?

2020年4月3日(金)13時45分
篠原 拓也(ニッセイ基礎研究所)

今回の新型コロナウイルスでいうと、2月19日に開かれた政府の専門家会議で、国内の状況としてはすでに感染早期という初期の段階ではなく、拡大感染期に入ったとの意見が出ていた。現在(2020年4月初め)は、感染経路が不明な患者が各地で発生しており、国内感染期に入っているとみることができる。

そして、患者の発生が減少し、低い水準でとどまっている「小康期」に至れば一段落。大流行は一旦終息している状況だ。小康期には、生活や経済の回復を図り、流行の第二波に備えることとされている。ただし、この小康期に入るための数値基準は示されていない。

過去の感染症でみる「小康状態」

そこで、SARS、韓国でのMERS、新型インフルエンザが小康状態に至るまでの流れを、簡単に振り返ってみよう。

【SARS】

SARSは2002年11月に、中国広東省仏山(フォーシャン)市で流行が始まった。当時、WHOには、中国で妙な肺炎が発生している―とのレポートがなされていた。このレポートは中国語で書かれていて、タイトルだけが英語に翻訳されていた。残念ながら当時、情報伝達に用いられていたのは、英語とフランス語だけだったため、レポートの内容が翻訳して読まれることはなく、対応が後手に回ったとされる(※現在は中国語、アラビア語、スペイン語、ロシア語も用いられるようになっている)。

その後、香港、台湾、ベトナム、シンガポール、カナダ、アメリカなどに感染が拡大した。2003年3月に、WHOは警告レベルを引き上げて、感染地域への緊急渡航自粛勧告を発令した。そして、この感染症は「世界規模の健康上の脅威」であると宣言した。

これを受けて、感染地域各国では、徹底した患者の隔離や、海外からの入国者に対する検査が行われた。その結果、5月中旬にピークを迎えた感染は、6月下旬には急激に抑制された。

【韓国でのMERS】

一方、MERSの韓国での感染拡大では、2015年5月中旬から感染した患者が出た。感染していた中東地域からの帰国者が、いくつかの医療機関を受診したうえで入院したことで、あちこちの病院で二次感染が発生したとされる。6月上旬には感染が拡大していった。韓国では、最終的に38人の死亡者が発生した。

このときも、感染者の隔離を徹底したことで、6月下旬には感染拡大のスピードが低下した。また、韓国では感染が医療施設内にとどまり、市中感染には至らなかった。このことも、早期の封じ込めにつながった背景にあるといわれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中