最新記事

日本社会

新型コロナウイルスがあぶり出す日本の危機 自粛ムードまとう「同調圧力」の危険性

2020年3月27日(金)17時00分
真鍋 厚(評論家、著述家) *東洋経済オンラインからの転載

新型コロナウイルスをめぐる騒動へのいら立ちからか人々の言動が過激化してきている Issei Kato - REUTERS

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。社会全体が「コロナ不安症」とでも評すべき症状に覆われているかのようだ。デマや流言の氾濫、買い占めや窃盗の勃発、外国人や医療従事者、感染者への差別などはもはや珍しい現象ではなくなった。

今や「安心」と引き換えに「自由」を犠牲にする政策が日本を含む世界各国で積極的に採用されている。大規模な集会の禁止や公的施設の閉鎖、移動制限、学校の休校がそれだ。世界保健機関(WHO)が実施を強く求めている「社会距離戦略」(人と人の接触を極力減らすこと)はまさにその象徴といえる。だが、この「安心」と「自由」のジレンマこそが新たな問題の温床になりつつある。

日本では、それが休校により屋外で遊ぶ子どもたちに対するクレームという「いびつな形」で噴出した。3月12日の毎日新聞は、児童らが公園などで遊ぶのは「休校の趣旨に反するのでは」という住民の声が各地の学校や教育委員会に寄せられていると報じた。千葉県松戸市の教育委員会には「子どもが昼間から公園に集まってうるさい」との苦情もあったという。

「社会の目が、相当厳しくなっている」

3月17日の北海道新聞でも、道内の自治体や学校には2月下旬の休校以降、「温水プールに子どもが集まっていた」「商業施設に生徒がたむろしている」「なんで自粛させないんだ」などの意見が地域住民から寄せられているとし、教諭の「社会の目が相当、厳しくなっているのを感じる」とのコメントを紹介した。

3月9日には文部科学省が「適度な運動や散歩を妨げるものではない」とする見解を示す事態になった。これは一端にすぎない。

恐らく誰もが多かれ少なかれ政府の要請から派生した「自粛ムード」というあいまいなものを基準に他人の行動を評価し始めているのではないだろうか。

政府が国民に不要不急の外出を控えることを求めると同時に、「人が集まる風通しが悪い場所を避けること」を呼びかけたことがきっかけになっているが、「中高生が街中を出歩いているのはけしからん」「この時期にレジャーに行くのは神経を疑う」などといった、自粛ムードを金科玉条のごとく内面化した人々による「不謹慎狩り」の様相を呈してきている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナのエネ施設に集中攻撃 新たな3カ

ワールド

焦点:外為特会、減税財源化に3つのハードル 「ほく

ワールド

スペイン、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止へ

ワールド

香港小売売上高、12月は前年比6.6%増 8カ月連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 8
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 9
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 10
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中