さまようアフリカ難民に、安住の地は遠い
Europe’s Harsh Border Policies
ルワンダ移送は解決策のように見えて、実は問題が多いと指摘するのは、移民問題を調査しているリビア人のアメラ・マルクスだ。「そもそもリビアで亡命・難民申請者として登録されている4万人のうち、どれだけの人を移送できるのか」
「難民たちは事態を本当に理解して出発したのだろうか。あんな状況で、本当に『自発的』に自分の未来を選ぶことができたのだろうか」と、彼女は問う。「私が同じ境遇でリビアにたどり着き、同じ苛酷な経験をしたとしたら、きっとUNHCRなどの組織を信じ、頼るしかないと思ってしまう」
誰が責任を取れるのか
アムネスティ・インターナショナルのマテオ・デベリスは、難民を安全な場所に移すのは喜ばしいことだが、「恩恵を受けられる人は限られている。リビアに人々を送り返したEU諸国を含め、大多数の国は再定住の場所を提供していない」と語った。
デベリスによれば、この移送プログラムは「状況を悪化させかねない。難民の流入を阻止するためなら、先進国はいくらでも金を出す。だから難民は、ずっと中継国にとどまることになる」。その場合、難民たちの運命は支援金の額で決まるから、安定した未来など望むべくもない。
難民全員の再定住は無理だとツイートしたUNHCRのコシュテルは、1月に発言を撤回。大多数は再定住させるつもりだが、それには1年ほどかかると語った。
UNHCRの広報官エリーズ・ビユシャランに問い合わせると、ルワンダに移った難民たちは再定住先の保証がないことを承知していたという答えだった。「当初は通知が出発直前だった例もあるが、今は2週間ほど前に知らせている」と、彼女は言う。
しかしルワンダにいる難民の受け入れを表明した国は少なく、受け入れ数も少な過ぎる。表明された受け入れ数は合計1150人。「とても需要に追い付かない」と、ビユシャランも認めている。
だったら、疑問は増えるばかりだ。リビアに難民を押し込めようとするEUの政策は正しいのか。どれだけ難民が苦しめば、EUは域内での受け入れに応じるつもりなのか。これが南欧から4000キロ以上も離れたルワンダに送り込まれた難民たちの抱える不安と不満だ。
時には死にたい気持ちになるが、時には希望の兆しも感じていると、アレクスは言った。しかし、リビアで死んだ仲間のことは頭から離れない。
1月に送ってきたメッセージには「もう疲れた」と書かれていた。「私たちは無力。いないも同然の存在だ。私たちはずっと、ここにいるしかないのかもしれない。どうすることもできない」
アレクスは「アフリカはアフリカでしかない」とも繰り返していた。腐敗と抑圧、搾取が横行し、自由もチャンスもないように思えるからだ。でも欧米に行けば、自分たちも「新しい人生を始められる。生き返ることができる」と、彼は信じている。
「私たちが味わった苦しみを本当に理解できる人はいないだろう。どんな苦難にも耐えてきたのは、安全が手に入ると信じればこそだ」と、アレクスは言う。「私たちはUNHCRを信じた。EUも信じた。その結果がこれだ。責任を取ってくれ」
<本誌2020年3月17日号掲載>
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