さまようアフリカ難民に、安住の地は遠い
Europe’s Harsh Border Policies
過去3年、EUは欧州大陸に渡ろうとする移民・難民の船を拿捕し、送還する目的でリビアの沿岸警備隊に約1億ユーロを支給してきた。そのせいで、運よく欧州大陸に渡れれば難民申請をできたはずの人々がリビアに戻され、性暴力や強制労働、拷問、人身売買が横行する収容施設に入れられている。それでも彼らは待つしかない。正規のルートで自由の国へ行ける望みは限りなく小さいのだが。
EUの報道官に尋ねると、EUは難民・移民の状況を改善する目的で国連に資金を出しているという答えが決まって返ってくる。またUNHCRに聞くと、リビアにいる難民の安全は確保できないから国外に移送するのが最善の策だという答えが返ってくる。だが、実際に国外に移れる人は多くない。昨年1年間にUNHCRの手でEU諸国または一時的な滞在地としての中継国に移れた難民は2427人。一方、今年最初の2週間だけでも1000人近くがリビアに送還されている。
こうしたなか、昨年9月にアフリカ連合とUNHCRが難民受け入れに関する合意を結んだことを受け、ルワンダが難民を受け入れ始めた。同国のポール・カガメ大統領は昨年の国連総会で、「アフリカも難民問題の解決策に貢献できる」と意欲を示していた。
UNHCRは年内に1500人をルワンダに移送したい考えで、それに必要な資金約2700万ドル(約2430万ユーロ)の提供を求めている。だが現状ではEUが1000万ユーロ、ノルウェーが500万ユーロ、マルタが5万ユーロの拠出を約束しただけだ。
リビアからルワンダに移った人々は、首都キガリの南東約60キロに位置するガショラに滞在している。キガリからはバスを2本乗り継ぎ、さらにオートバイで移動する必要がある。彼らのキャンプの周囲に柵はない。警備員のいる門を避けてキャンプに出入りするのは簡単だろう。「見えない壁はあるがね」。あるエリトリア人はそう言って笑った。
比較的安全で、経済も順調に発展しているとされていても、ルワンダは独裁体制下の警察国家だ。メディアの活動は厳しく規制されている。
交錯する感謝と怒り
筆者もキャンプ内には入れなかった。いくらメールで問い合わせても返事はなかった。昨年11月には直接、同国の緊急管理担当省を訪ねた。だが5日も待たされた揚げ句、広報官から「ジャーナリストが単独でキャンプを訪れることはできない」と告げられた。
その代わり、今度グループ取材を受け入れる際には声を掛けてやる、ただし「君が政府に都合のいい記事を書いてくれるならね」と、広報官は平然と言った。その後、私に招待状が来ることはなかった。