最新記事

ルポ

さまようアフリカ難民に、安住の地は遠い

Europe’s Harsh Border Policies

2020年3月13日(金)15時30分
サリー・ヘイデン

過去3年、EUは欧州大陸に渡ろうとする移民・難民の船を拿捕し、送還する目的でリビアの沿岸警備隊に約1億ユーロを支給してきた。そのせいで、運よく欧州大陸に渡れれば難民申請をできたはずの人々がリビアに戻され、性暴力や強制労働、拷問、人身売買が横行する収容施設に入れられている。それでも彼らは待つしかない。正規のルートで自由の国へ行ける望みは限りなく小さいのだが。

EUの報道官に尋ねると、EUは難民・移民の状況を改善する目的で国連に資金を出しているという答えが決まって返ってくる。またUNHCRに聞くと、リビアにいる難民の安全は確保できないから国外に移送するのが最善の策だという答えが返ってくる。だが、実際に国外に移れる人は多くない。昨年1年間にUNHCRの手でEU諸国または一時的な滞在地としての中継国に移れた難民は2427人。一方、今年最初の2週間だけでも1000人近くがリビアに送還されている。

こうしたなか、昨年9月にアフリカ連合とUNHCRが難民受け入れに関する合意を結んだことを受け、ルワンダが難民を受け入れ始めた。同国のポール・カガメ大統領は昨年の国連総会で、「アフリカも難民問題の解決策に貢献できる」と意欲を示していた。

UNHCRは年内に1500人をルワンダに移送したい考えで、それに必要な資金約2700万ドル(約2430万ユーロ)の提供を求めている。だが現状ではEUが1000万ユーロ、ノルウェーが500万ユーロ、マルタが5万ユーロの拠出を約束しただけだ。

リビアからルワンダに移った人々は、首都キガリの南東約60キロに位置するガショラに滞在している。キガリからはバスを2本乗り継ぎ、さらにオートバイで移動する必要がある。彼らのキャンプの周囲に柵はない。警備員のいる門を避けてキャンプに出入りするのは簡単だろう。「見えない壁はあるがね」。あるエリトリア人はそう言って笑った。

比較的安全で、経済も順調に発展しているとされていても、ルワンダは独裁体制下の警察国家だ。メディアの活動は厳しく規制されている。

交錯する感謝と怒り

筆者もキャンプ内には入れなかった。いくらメールで問い合わせても返事はなかった。昨年11月には直接、同国の緊急管理担当省を訪ねた。だが5日も待たされた揚げ句、広報官から「ジャーナリストが単独でキャンプを訪れることはできない」と告げられた。

その代わり、今度グループ取材を受け入れる際には声を掛けてやる、ただし「君が政府に都合のいい記事を書いてくれるならね」と、広報官は平然と言った。その後、私に招待状が来ることはなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、イラン作戦の目標変わらず=国防長官

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ワールド

米財務長官、イラン原油への制裁解除を示唆 供給増で

ワールド

欧州主要国と日本、ホルムズ海峡安全確保やエネルギー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 8
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 9
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 10
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中