ダイヤモンド・プリンセス号の感染データがあぶり出す「致死率」の真実
NOT THAT DEADLY
一般的な環境では、こうした情報を知ることはできない。だから正確な致死率をはじき出すことが難しい。中国の年間死亡者数は900万人。つまり新型コロナウイルスがなくても、1日に2万5000人、この2カ月なら約150万人が死亡していた計算になる。
このうちかなりの割合が「たばこ病」とも言われる慢性閉塞性肺疾患(COPD)や下気道感染症、そして肺癌による死だ。その症状は、COVID-19の重い症状と区別がつかない。
中国のCOVID-19による死者は、長年の喫煙習慣によりCOPDを発症するのと同じ年齢層で急増した(中国では成人男性の半分が喫煙者だ)。中国の感染拡大のピークとなった1〜2月初旬、1日約25人のペースで死者が出たが、そのほとんどが一般にCOPDが幅広く見られる高齢者だった。また、死者の大多数が集中した湖北省は、肺癌とCOPDの罹患率が中国の平均よりも著しく高い地域だ。
1日2万5000人の死亡者に占める25人のうち、新型コロナウイルスだけが原因で死亡した人と、合併症が原因で死亡した人を見分けるのは容易ではない。しかし重要なのは、新型ウイルスによって、通常より死亡者数がどのくらい増えたのかだ。
そこで重要な視点をもたらしてくれるのが、ダイヤモンド・プリンセス号のデータだ。乗員・乗客3711人のうち、陽性と判定されたのは705人以上(船内の環境とウイルスの感染力を考えると驚くほど少ない)。その半分以上は無症状だった。そして死者は6人。つまり致死率は0.85%だ。
患者の死因を見極めるのが非常に難しい中国などとは異なり、この6人は超過死亡(新型コロナウイルスがなければ生じなかったはずの死亡)だと考えることができる。何より重要なのは、この6人が全員70歳以上だったことだろう。70歳未満の乗客は1人も死んでいない。
中国の統計が正しいなら、ダイヤモンド・プリンセスでも70歳未満の乗客4人が死んでいなければならない。だが、そうはならなかった。