ダイヤモンド・プリンセス号の感染データがあぶり出す「致死率」の真実
NOT THAT DEADLY
ダイヤモンド・プリンセス号は横浜港到着後、2週間の検疫期間に(2月16日) ATHIT PERAWONGMETHAーREUTERS
<新型コロナウイルスの致死率は過度に高く報じられている? 感染データの分析から得られた結論は、対策を講じるべきなのは「学校ではなく老人ホーム」。本誌3月17日号の特集「感染症vs人類」より>
新型コロナウイルスが、世界中でパニックを引き起こしている。薬局から手指消毒剤が姿を消し、オンラインではN95マスクがとんでもない高値で取引されている。そのどちらも、まるで1918年に数千万人が命を落としたスペイン風邪の再来のような騒ぎだ。
確かに、現在報じられているCOVID-19(2019年型コロナウイルス感染症)の致死率は2〜3%で、スペイン風邪に近い水準だから、不安に駆られるのは無理もない。だが最終的にこの数字はもっと低いことが明らかになるだろう。米国立衛生研究所(NIH)と米疾病対策センター(CDC)が言及した1%という致死率さえも、このウイルスの威力を過大評価している恐れがある。
新型ウイルスの発生初期に、推定致死率が過度に高く報じられるのはよくあることだ。2009年に流行したH1N1型インフルエンザは当初、最終的な致死率1.28%の10倍近い数字が取り沙汰された。今回も同じような現象が起きている。
新型コロナウイルスの感染者が湖北省武漢で爆発的に増えたとき、致死率は4%超とされていた。やがて湖北省の他の地域に感染が広がると、致死率は2%に、中国全体に広がると0.2~0.4%に低下した。無症状者や軽症患者も検査対象に含められるようになると、より現実的な数字が明らかになってきた。
WHO(世界保健機関)は最近の報告書で、世界的な致死率を3.4%と予想以上に高く示したが、パニックに陥る必要はない。最終的には、この数字が1%を大幅に下回ることを示唆する、極めて直接的かつ説得力のある証拠が存在する。それは豪華クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の感染データだ。
語弊を恐れずに言うと、隔離されたクルーズ船は、ウイルスの性質を研究するには絶好の実験室だ。何しろ、通常はコントロールできない多くの条件がそろっている。ダイヤモンド・プリンセスの場合、乗客・乗員3711人のうち、乗船時に新型コロナウイルスに感染していたのはたった1人で、それ以外は基本的に旅ができるほど健康で、限られた場所(船内)でウイルスにさらされた。
中国からは恐ろしい数字が発表されていたが、そのうち何人が別の病気を持っていたかは分からない。いったい何人が命に関わる別の病気で既に入院していて、そこで新型コロナウイルスに感染したのか。健康だったのに、このウイルスに感染して、重症化したのは何人なのか。