ヒマラヤの氷河がアイスクリームのように解け始めている
Nepal Gets Serious About Climate Change
ネパール森林・環境省で気候変動管理部のトップを務めるマヘシュワル・ダカルは「ネパールのヒマラヤ地域には、全く新しい知識が膨大に埋まっている」と語る。「4月に開催される『エベレスト対話』が、この地域の革新的な知識の発見につながれば、気候変動との闘いにも役立つはずだ」
さらにダカルはこう続けた。「ネパールは気候変動の悪影響のせいで、非常に脆弱な国になった。ヒンズークシ・ヒマラヤ地域のような山岳地帯は、世界の大半の地域よりも温暖化が急激に進んでいる。最近発表された報告書でも、この事実が裏付けられている。報告書によれば、世界の平均気温の上昇幅を産業革命以前に比べて1.5度以内に抑えられたとしても、今世紀中には氷河の3分の2が解けてしまう」
ヒマラヤ地域の気候変動は多様な影響をもたらすと、専門家たちは主張する。その影響に最も苦しめられるのは、脆弱な貧困国の国民だという見方も共有されている。
ネパールの首都カトマンズに本拠を置く先住民研究開発センターのパサン・ドルマ・シェルパ所長は、気候変動はヒマラヤ地域で暮らす人々を悲劇的な状況に追い込むと警鐘を鳴らす。「気候の変化があまりに大きいので、いくら対応しようとしてもし切れない」
さらにシェルパは「降雨パターンの変化が山地で農業を営む人々に影響を与えている」と指摘する。これまでと同じ農法では、収穫が落ちる一方だというのだ。「ネパールのヒマラヤ地域の人々の生活を支えているのは、農業と畜産業と観光業だ。その農業を、気候変動による水資源の枯渇が直撃している」
ネパール政府が感じる危機感
国際総合山岳開発センター(ICIMOD)の水資源・気候変動の専門家サントシュ・ネパールは「森林・環境省の報告書は、この国の平均気温は今世紀末までに1.7~3.6度上昇し、降雨量は11~23%増加すると推定している」と言う。「ICIMODの研究は、1980~2010年にネパールの氷河面積が25%消失した可能性を指摘する。氷河と雪解け水は、ヒマラヤを源流とする河川の水量の季節変動を調節する上で、非常に重要な役割を果たしている。ヒンズークシ・ヒマラヤ地域の氷河は今世紀中に少なくとも3分の1が失われると予想され、下流域では水資源確保に深刻な影響が出る恐れがある」
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「海洋・雪氷圏特別報告書」によると、温室効果ガス排出の大幅削減に今すぐ成功したとしても、今世紀中にはこの地域の氷河の約5分の1が失われるという。問題を放置した場合、氷河の融解は3分の1まで進むと考えられる。もろい生態系や、この地域に暮らす2億5000万の人々、そして下流域の16億5000万人の生活に深刻な被害をもたらすことは確実だろう。