最新記事

地球温暖化

ヒマラヤの氷河がアイスクリームのように解け始めている

Nepal Gets Serious About Climate Change

2020年2月15日(土)15時40分
カマル・デブ・バッタラリ、スジャータ・カルキ(共に在カトマンズジャーナリスト)

ネパールでは気候変動の影響が広範囲に及ぶはずだ。例えば、川の流れが極端に大きく変化すると、下流域では農業用水や生活用水の確保が難しくなる。洪水と干ばつの両方が多発し、インフラや水力発電が影響を受ける。

さらには、人々の健康、都市生活、観光業などにも影響が拡大していく。そのため「社会への影響は幅広い視野で考える必要がある」と、ICIMODのネパールは主張する。

ネパール政府がこれまで以上に国際的な舞台で問題を訴えようとしているのは、事態が危険なスピードで進んでいるためだ。4月の「エベレスト対話」には、アントニオ・グテレス国連事務総長も招待した。ネパール外務省によれば、この会議では、「適応力・回復力・暮らし」「グリーンエコノミー」「伝統的な知識や自然に基づいた解決策」「変革による解決」などを議題にする予定だ。

ネパールがヒマラヤの気候変動問題解決の旗振り役になるのは初めてではない。2009年にマダブ・クマル・ネパール首相が率いていた政府は気候変動問題を訴えることを目的に、エベレストのベースキャンプで「ヒマラヤを救え」をスローガンに掲げた閣僚会議を開き、10項目の「エベレスト宣言」を採択した。だが程なく政権が交代したため、宣言はお蔵入りになった。

この宣言の第9項にはこうあった。「気候変動がヒマラヤでの雪解けや氷河の融解に与える影響についての研究が不十分であるため、ネパール政府は知識を集積させるためにイニシアチブを取る」

それから10年以上が過ぎた今、この目標に向けた行動が増えてきた。政府関係者らは、ネパールが声を上げる大きな契機となったのは2009年の閣僚会議だったと言う。今年4月の「エベレスト対話」がさらに国際社会を揺り動かし、ヒマラヤを救うための速やかな行動を促すきっかけになることを、彼らは信じている。

From thediplomat.com

<本誌2020年2月18日号掲載>

【参考記事】エベレストで死んだ登山家、「渋滞」の危険を警告していた
【参考記事】4万年前の線虫も......氷河や永久凍土に埋もれていた生物が温暖化でよみがえる

20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中