最新記事

新型肺炎

新型コロナウイルス 世界に広がる東洋人嫌悪   

2020年2月4日(火)16時10分
モーゲンスタン陽子

ブレグジットの日のイギリス(記事内容とは関係ありません) Russell CheyneーREUTERS

<新型コロナウイルスにかこつけて、中国人、ひいては東洋人全般に対する差別的行為が広がっている>

新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、各地で中国人、ひいては東洋人全般に対する差別的言動が広がっている。

日本人も差別対象に?

2月2日、100人以上のドイツ人が空軍機で武漢から帰国したが、うち2人が新型コロナウイルスに感染していた。ドイツでの感染者はこの時点で7人、3日までに12人が確認された。最初の感染者が見つかったのは1月28日、バイエルン州だ。翌29日には同じバイエルン州のニュルンベルク市で世界最大級の国際玩具見本市が開催されるため、当初想定されていた数を下回ったものの、中国からすでに360社以上約1700名が入国していた。国別では、ドイツに続き、2番目に多い。武漢からの出展も1社登録があったようだが、中国を出国できず不在だった。

中国企業の集中するホールを訪れる者はほとんどなく、気の毒なほど閑散としていたようだ。ただ、各ブースを訪れる中国人への対応は通常通りで、会場ではマスクを着用する人の姿も少なく、それほど緊迫した雰囲気はなかった。現時点では期間中のトラブルも報告されていない。

しかし、日本人出展者や現地在住日本人からは、地下鉄や駅、店などで、あからさまに避けられたり嫌な顔をされたりという話を聞く。

デンマークに続き、ドイツ有名雑誌も物議

ウイルス拡散以上に懸念されるのが、新型コロナウイルスにかこつけて、中国人、ひいては東洋人全般に対する差別的行為が広がることだ。ドイツではまだそれほど酷い被害を聞かないものの、大手シュピーゲル誌が、真っ赤なケープにガスマスクを身につけた東洋人男性の写真と「コロナウイルスMade in China」というタイトルの扇情的なカバーを使用。これには中国人のみならずドイツ人からも批判の声が多数あがり、3日には在独中国大使館が同誌に正式に抗議した。ウイルス拡大の一要因はグローバリゼーションにあるとの同誌の指摘に、「本当の脅威はウイルスやグローバリゼーションではなく、無知と人種差別だ」というドイツ人の声もあった。

co-sp-2020.jpg


欧州ではこれに先駆け、デンマークのユランズ・ポステン紙が、中国国旗の5つの金星を新型コロナウイルスに描き換えた風刺漫画を掲載し、非難を浴びた。オーストラリアでも、ヘラルド・サンが「中国ウイルス パンダ病」と報道したが、「明らかに一線を超えている」とニューヨーク・タイムズは非難する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中