最新記事

少女兵

殺人を強いられた元少女兵たちの消えない烙印

When Young Girls are Forced to Go to War

2020年1月24日(金)17時00分
アビバ・フォイアスタイン(テロ対策専門家)

元少女兵の社会復帰を成功させるためには、彼女たちが直面する個々の問題への対処法も考える必要がある。元戦闘員の社会復帰プログラムを主導する国際機関は、女性が実際の戦闘に加わっていた可能性を認めたがらない。その結果、女性向けの取り組みがおろそかになる。

シエラレオネでは武装解除した男性戦闘員に対し、武器の供出と引き換えに教育、職業訓練、就職斡旋サービスを提供するプログラムを実施した。しかし女性については主に補助的要員だったという誤った思い込みのため、大半がプログラムから除外された。この社会復帰プログラムを通じて武装解除された子供の兵士は6845人。そのうち女性はわずか8%だったが、戦闘に関与した女性と少女の割合は最大50%に達していたと推定されている。

少女兵の社会復帰は治安上の課題でもある。彼女たちの支援にもっと力を入れないと、停戦後も長期にわたり社会的不和が悪化し続け、紛争の再燃につながりかねない。

magw200124_Girls7.jpg

リベリアの反政府武装勢力の軍事施設で訓練を受ける若い女性兵士 PATRICK ROBERT-SYGMA/GETTY IMAGES

支援の手だては無限にある

専門家によれば、特定の社会階層を執拗に差別や排除の対象にする行為は暴力につながりやすい。カンボジアやルワンダの大虐殺でも、それに先行して特定集団へのレッテル貼り行為があった。

仕事、食料、教育といった基本的ニーズを満たそうとする努力が拒絶されると、彼女たちは自暴自棄になり、生きるために武装勢力に戻り、ひいては社会の治安を悪化させる。

世界にできることはたくさんある。問題を報道するメディア。支援策を出す国際機関。IT企業は将来いい仕事に就けるようにプログラミング教育を提供することができる。

「ウガンダ平和の子供たち」やウォー・チャイルドのようなNPOは、元少年・少女兵への心理的・社会的支援、奨学金、医療支援、職業訓練だけでなく、地域社会への啓蒙活動も行っている。こうした団体に寄付することなら、一般市民にもできる。

世界各地にいるマーサのような元少女兵には、私たちの助けが必要だ。戦争を生き延びることも大変だが、その後の社会的・経済的影響を耐え抜くことも同様に難しい。

<本誌2020年1月28日号掲載>

【参考記事】コンゴで少年より重宝される少女兵
【参考記事】解放後も少年兵を苦しめ続ける心の傷と偏見

20200128issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月住宅着工戸数は前年比マイナス2.5%、8カ月

ビジネス

みずほ証の10ー12月期、純利益は4.4倍 債券や

ビジネス

アングル:中銀デジタル通貨、トランプ氏禁止令で中国

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中