20年前、なぜ日本は「黒船CEO」ゴーンを求めたのか
Black Ship CEOs
韓国や日本の企業がおかれた現状を考えれば、心地よい伝統が失われるのも仕方ないかもしれない。自国でしか通用しないルールに従っていては、国境を超えた市場争奪戦を勝ち抜けないからだ。
日本では99年、イギリスのケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)がNTTとの買収合戦の末、国際デジタル通信(IDC)を手に入れた。国際通信に進出するNTTにIDCが協力することは郵政省も認めた既定路線とみなされていたが、C&Wが資本の論理でIDCを奪い取ったのだ。
新生IDCはC&W出身のサイモン・カニンガム社長の下、高付加価値企業に変身するための大胆な事業再編に着手。今年3月期には法人顧客の比率が80%に上昇し、売り上げに占めるデータ通信の割合も99年の15%から50%に増えた。
IDCの社員は、社長を「サイモン」または「サイモンさん」と呼ぶ。社長が日本語で社員に声をかけることも多いという。「(事業再編に成功したのは)社長自ら社員とのコミュニケーションを密にして、ビジョンを知らしめた結果だ」と、マーケティング担当役員の三木眞弘は言う。
宮崎県のリゾート施設シーガイアを運営するフェニックスリゾートのマイケル・グレニー社長は、買収される以前の同社の帳簿を見て「収支が一致していないことに驚いた」という。「来客数を増やすことに夢中で、利益を上げようという姿勢はあまりなかった」
深刻な日本の経営者不足
日本企業の経営は、日本人に任せるのが望ましいと考える外国企業や買収ファンドも多い。だが外国人社長には、アウトサイダーゆえの利点もある。
「海外では、業績が思わしくないと株主が社外から経営者を招くケースも少なくない」と、経営コンサルティング会社ベイン&カンパニー(東京)のマイケル・ガースカは言う。「社外から来た経営者は会社のことをよくわかっていないので、リスクは伴う。だがアウトサイダーには、戦略実行の過程で既成概念や制約にとらわれない発想を持ち込める強みがある」