最新記事

フランス

年金改革反対のゼネスト続くフランスで、「階級戦争」ボードゲームが大ヒット

Class Warfare, Inequality Board Game 'Kapital!' Sells Out Ahead of Christmas

2019年12月27日(金)13時40分
ベンジャミン・フィアナウ

プレイヤーのうち「支配的」な1人だけが勝者になれる France 24 English/YOUTUBE

<プレイヤー同士が競って世界の富裕層の仲間入りを目指すボードゲームが、クリスマス前に売り切れになるほどの人気に>

フランスではマクロン政権が進める年金制度改革に抗議して、今月5日から全土の労働組合などによる大規模なゼネストが継続中で、鉄道、バスなどの公共交通機関はマヒ状態に陥っている。

そんな混乱した年末の世相を反映して、プレイヤー同士が富裕層入りを目指して競い合う、現代の経済格差を描写したボードゲームが売り切れるほど大ヒットしている。

<参考記事>年金維持のためどの国より健康であり続けなければならない日本──引退年齢と健康寿命の国際比較

このボードゲーム「キャピタル!(資本)」は、フランスの社会学者で作家のモニク・パンソン=シャルロと夫ミシェルが考案した。労働者、中産階級のプレイヤーが競い合って、タックスヘイブン(租税回避地)や豪華なクルーズ船取得を目指す。

国際ニュースチャンネル「France 24」は今週24日、このゲームが12月の3週間で1万セットが売り切れる大ヒットになっていると報じた。ゲームのテーマは「階級戦争」で、貧困層や中産階級のプレイヤーたちとの競争に勝って、トップの「支配的」な立場になった1人だけが超富裕層の仲間入りを果たすことができる。プレイヤーは「社会資本」「文化資本」「象徴資本(立ち居振る舞い、考え方などによる優位性)」を増やすことによって、次世代の世界的大富豪になる夢を叶えられるというゲームだ。

ゲームのサブタイトルは「階級戦争に勝つのは誰だ?」。考案者のパンソン=シャルロは取材に対して「マクロン政権下のフランスでは、支配階層の固定化と搾取が極限まで進み、もはや階級闘争ではなく『階級戦争』の域に達しているから」と語っている。

「階級戦争」ボードゲーム「キャピタル!」を考案者が解説


勝者になれるプレイヤーは1人だけで、ゲームの最後には世界の富裕層エリートの仲間入りができる。「資本」が足りず敗北した他のプレイヤーは、ゲーム開始時と同様に貧民層、中産階級同士の競争から抜け出せない。そして「スピード」だけでは富裕層にはなれない。

<参考記事>「イエローベスト」の暴徒化に揺れるフランス、その不穏な正体

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中