最新記事

野生動物

絶滅危惧種スマトラトラの「胎児」を密売? インドネシア、一方では人が襲われる事件も

2019年12月10日(火)17時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

逮捕された密猟犯の前に並べられたスマトラトラの押収物 *一部画像に加工をしております  South China Morning Post / YouTube

<野生動物の保護は必要だが、一方で彼らによって人が襲われる事件も。人間と動物たちの共生の道は?>

インドネシアのスマトラ島に生息し、絶滅危惧種に指定されているスマトラトラが、農園で働く労働者を襲う事件が相次ぎ、これまでに2人が死亡、観光客を含む2人が負傷した。一方ではスマトラトラの胎児や毛皮を所持・保管していたインドネシア人5人を警察が自然保護法違反容疑で逮捕する事案も発生するなどスマトラトラと人間の「攻防」が激化している。

インドネシアメディアの「テンポ」(ネット版)やシンガポールのCNAテレビなどの報道によると、12月5日にスマトラ島南スマトラ州パガララム市にあるコーヒー農園で働く男性が自宅に戻らず、家族が農園内を捜索していたところ、遺体を発見した。

発見現場付近にはトラが徘徊していた痕跡があることや、遺体が足と骨しか残されていなかったことなどから付近に生息するスマトラトラに襲われ、喰われたものとみられている。

この男性の家族はメディアに対して「農園内の小屋に寝泊まりすることもあったので今回もそうかと思っていた」と話しているため、捜索が迅速に行われなかった可能性も指摘されている。

約1カ月でトラに襲われる被害4件発生、2人が死亡

同州パガララム市周辺では11月以降の約1カ月の間にスマトラトラが人間を襲う事件が今回のものを含めて4件も発生しており、2人が死亡、2人が重傷を負う非常事態となっている。

11月17日には同市タンジュンサクティ地区のコーヒー農家で働くクスワント氏(57)がスマトラトラに襲われて死亡する事件が起きている。

このほか11月16日にはパガララム市グヌンデンポ公園敷地内で仲間とキャンプを楽しんでいたインドネシア人観光客のイルファンさん(19)がスマトラトラに襲われて重傷を負った。

そして12月12日には同じパガララム市デンポスラタン地区でコーヒー農園の労働者マルタロラニ氏(24)がスマトラトラに襲われ、右脚太腿、腹部に重傷を負った。

わずか1カ月の間にパガララム市周辺でスマトラトラによる事件が4件も相次いだことについて地元警察や自然保護局関係者は、森林開発や火災などでトラの生息域が狭められ、エサを求めて農園に出没することが多くなったとの見方を示し、農園で働く労働者や地域の住民に対し、警戒を呼びかける事態となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレは当面2%程度、金利は景気次第=ポ

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中