最新記事

ウイグル

ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を虐殺した」と言い始めた中国

China Hits Back at U.S. Human Rights Bill

2019年12月5日(木)17時45分
トム・オコナー

華報道官が出した2.09%という数字は、米国勢調査局が2017年に発表した最新の調査結果──アメリカの総人口3億2571万9178人に対し、アメリカン・インディアンとアラスカ先住民(純血または混血)の人口679万5785人から割り出したものだ。純血のみに限ればアメリカン・インディアンとアラスカ先住民の人口は410万4295人で、総人口の1.26%となる。

今日では先住民の居留地は、米内務省インディアン問題部の管轄下で、地元の部族が運営しており、国土全体の約2.79%を占める。居留地では、アルコール依存症やオピオイド系薬物の乱用、貧困率など負の社会指標が他地域と比べ著しく高い。

今年3月、米国務省が年次国別人権報告書を発表し、中国の人権侵害は「群を抜いて」ひどいと指摘すると、中国政府は即座にアメリカの人権状況をまとめた報告書を発表。「人権の守り手」を自任するアメリカは有権者登録でマイノリティの権利を抑圧する、先住民を迫害するなど数々の権利侵害を犯していると批判した。

広大な国土に多様な民族が住む中国は、有史以来、民族間の緊張にたたられてきたが、人口の圧倒的多数を占める漢民族が長きにわたり支配的地位を保ってきた。さらに1949年に中国共産党が政権を樹立すると、国を挙げて無神論を標榜し、特定の宗教を抑圧・禁止してきた。

ロシアは中国を擁護

漢民族優位と宗教弾圧は、中国政府が進めるウイグル人の民族的アイデンティティー弾圧キャンペーンに役立っている。世界最大の人口を抱える中国で、ウイグル人は人口0.8%前後を占めるにすぎない。中国政府は弾圧を否定するが、報道によればここ数年、特に2009年7月に新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた騒乱後はウイグル人排除に拍車がかかった。

アメリカなど欧米諸国は、ウイグル人を拘束し、「再教育」と称して強制収容所のような大規模施設に長期間収容する中国政府のやり方を問題にし、欧米と日本など22カ国は今年7月10日、国連人権理事会に宛てた共同書簡で中国の人権状況調査のため査察団の派遣などを求めた。その2日後、今度はロシアなど37カ国(イスラム教徒が多数を占める国も含む)が中国を擁護する書簡を公開している。

経済規模と外交力で拮抗する米中2大国は、貿易戦争とテクノロジーの覇権争いに加え、人権分野でも世界を2分する勢力争いに突入した格好だ。

20191210issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月10日号(12月3日発売)は「仮想通貨ウォーズ」特集。ビットコイン、リブラ、デジタル人民元......三つ巴の覇権争いを制するのは誰か? 仮想通貨バブルの崩壊後その信用力や規制がどう変わったかを探り、経済の未来を決する頂上決戦の行方を占う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

鉱工業生産10月は1.4%上昇、2カ月連続プラス 

ビジネス

米メディケアの薬価引き下げ、大半の製薬企業は対応可

ワールド

米銃撃で負傷の州兵1人死亡、アフガン出身容疑者を捜

ワールド

カナダ、気候変動規則を緩和 石油・ガス業界の排出上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中