最新記事

北朝鮮情勢

北朝鮮のICBM実験に身構えるアメリカ

Imminent North Korea Intercontinental Ballistic Missile Test

2019年12月24日(火)16時40分
ダニエル・ポリティ(ジャーナリスト)

金正恩の言う譲歩期限の年末はすぐそこだ(写真は北朝鮮と韓国の軍事境界線を超えて会った金とトランプ、6月30日) KCNA/REUTERS

<北朝鮮はいつICBM実験をするかわからないが、トランプにはそれを止める有効な手立てはない。米政府関係者はあらゆる可能性に備えようとしている>

米軍と米情報機関は、神経質に北朝鮮の動きに目を光らせている。近い将来、大規模なミサイル実験が行われると専門家が予想しているためだ。その実験は、アメリカ本土に達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験である可能性が極めて高い。今のところ、アメリカの当局者にできることは、ただ最善の結果を祈ることだ。彼らは、「ドナルド・トランプ米大統領にはミサイル実験を止める有効な手だてがないと観念しているようだ」とニューヨーク・タイムズ紙は書いている。

北朝鮮は、もし年内に制裁緩和に進展が見られなければ「クリスマス・プレゼント」を届けると一方的に予告している。だが米朝交渉が行き詰まっており、北朝鮮がトランプに対して頻繁に侮辱的な言葉を投げつけ始めたことを考えると、この段階で何らかの手を打つのはほぼ不可能に見える。米朝の緊張が高まるなか、もし本当にホリデーシーズンにミサイル実験が行われれば、トランプの主要な外交政策の一つが大打撃を受けるのは必至だ。

新年の演説で発射宣言か

2020年には大統領選挙も控えている。複数の北朝鮮専門家は、金正恩朝鮮労働党委員長は、「トランプが何よりも自らの再選に執着していること」を利用し、「制裁解除と北朝鮮に有利な取引を求めてくる」可能性があると、ポリティコは指摘する。アメリカではトランプの弾劾裁判の手続きが進められていることもあり、北朝鮮は今こそトランプを攻めるチャンスだと判断したのかもしれない。

ICBM発射実験が現実になった場合、トランプ政権がどのように反応するかは予測できる。トランプは以前から、長距離ミサイル実験を北朝鮮が中止していることこそが米朝交渉がうまくいっている証拠だと強調してきた。もし今撃てば、北朝鮮に厳しい態度を示さざるをえなくなるだろう。

だが、北朝鮮が何の実験を行うかは、はっきりしない。CNNによれば、長距離ミサイルではなく、人工衛星を搭載したロケットを打ち上げるという見方もある。CBSニュースは当局者の話として、短距離ミサイルやロケットエンジンの実験はいつ行われてもおかしくないがICBMの実験が2019年内に実施される可能性は低いと伝えている。

金は、恒例の新年の演説で、これ以上外交の成果を待ってミサイル発射を控えることはできない、と宣言する可能性がある。米当局者はあらゆる可能性に備えていると言う。マーク・ミリー米統合参謀本部議長は、「北朝鮮はさまざまなシグナルを出している。われわれは、あらゆる可能性に対して備えるだけだ」と述べた。問題は、緊張が高まると悪い選択肢を選ぶトランプの悪い癖が出る恐れがある。ニューヨーク・タイムズ紙は次のように解説する。

<参考記事>北朝鮮のミサイル発射直後、アメリカはICBMを発射していた
<参考記事>アメリカの衛星が捉えた金正恩「深刻な事態」の証拠写真

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中