女性が経済的に不利なのは、お金の話を語ることがタブーだから
The Last Taboo
女性が投資を始めようとすると、圧倒的に男性優位の投資業界の人たちから、こう警告される。女性は男性よりもリスクを取らず、男性ほど投資に向いていないから、まずは勉強してと(複数の調査で、女性のほうが男性より有能な投資家だという結果が出ているのに)。
語られない女性の現実
実際、ウォール街はもっぱら男性のほうを向いている。ファイナンシャル・アドバイザーの84%、投信マネジャーの90%が男性というだけではない。あの街のシンボルからして「怒りで鼻を鳴らす雄牛」の銅像だ。
女性はお金の扱いが得意ではなく、投資よりも貯蓄に向いている。お金を稼ぐのは男の仕事だ。女性は日々の生活の中で絶え間なく、こうしたメッセージを受け取っている。多くの女性がそんなメッセージを信じ、お金に疎いほうが女らしくて男に好かれると思い込んでいる。
そうして女性は投資の判断を男性に任せてしまう。スイスの銀行最大手UBSの調査によれば、家庭の投資判断を主導するのは男性が83%。女性は2%にすぎない。
こうしたメッセージは、結果的に女性自身の責任論に帰着させる。女性の経済的な地位が相対的に低いのも貧困率が高いのも自業自得で、社会的な要因のせいではない。そう思わされる。
もっとお金に強くなれ。もっと上手に投資計画を立てろ。巧みに立ち回って昇給を勝ち取れ。毎日1杯のカフェラテ習慣をきっぱりと断ち切れ。そして「自己肯定感」の弱さを克服せよ。そんなふうに説教される。
こうした自己啓発の勧めを装う偽りの自己責任論のせいで、金銭面で女性を抑圧する社会的制度は堂々と免罪符を得ている。
この文脈では、女性の置かれた現実はほとんど語られない。アメリカが先進国では唯一、有給の育児休暇を制度化していない国であることも、昨年のある調査で女性の81%が少なくとも一度はセクハラを受けたことがあると回答していたことも、学生ローンの返済に困っている女性が男性より圧倒的に多い事実も語られない。
退職時の女性の資産は男性の3分の2(都市問題研究所の推計では、有色人種の女性の場合はもっと少ない)という事実も、この文脈では女性の自己責任(個人的な能力不足と努力の不足)とされてしまう。