フェイクニュース? アマゾン火災をブラジルが放置する理由
Clearing the Smoke
8月2日には、違法な森林伐採や野焼きを取り締まるため、アマゾナス州政府が非常事態宣言を発令。だが、ブラジルの一般市民が状況の深刻さに気が付いたのは、熱帯雨林の境界付近から何本もの筋状の煙が上がっている衛星写真をNASA(米航空宇宙局)が公開したときだ。
「アマゾンで起きていることを一般市民に毎日のように気に掛けてもらうのは難しい」と、環境保護団体グリーンピース・ブラジルのマルシオ・アストリーニ公共政策調整官は語る。「だが、サンパウロが暗闇に包まれた事件は、ついに事態をはっきりさせた」
ロンドニア州の州都ポルトベーリョに住む化学専攻の大学生ジョアキム・ギレルメ・ストレロー(22)は、ポルトベーリョでここ3週間、サンパウロで起きたことが毎日起こっていると語る。呼吸困難に陥ったり、目や肌の炎症を訴えたりする人も少なくないという。多くの住民は外出を控え、外出するときはマスクを着用している。
森林に近いコミュニティーでは、延焼による死者も出ている。ロンドニア州のある村では8月半ば、家屋の焼け跡から逃げ遅れたとみられる夫婦の黒焦げの遺体が見つかった。「私たちはじりじりと死に近づいている」と、ストレローは語る。
「ブラジルには2つの異次元空間があるかのようだ。よその地域の人たちは、森林火災に関する統計は政治的イデオロギーに基づく嘘だと言うが、私たちは火災を現実に目撃している。これは政治的な意見ではなくて事実なのだ」
最近の世論調査によると、ブラジルの有権者の88%がアマゾンの森林破壊に懸念を示しており、90%が大統領と議会は行動を起こすべきだと考えている。ところが実際に対策を講じようとすると、たちまちこの問題は政治的二極化を招くことになる。
火災はフェイクニュース?
今回の火災を森林伐採と結び付ける著名人やジャーナリストは、極左の陰謀論者だと批判されがちだ。昨年の大統領選にも出馬したマリーナ・シルバ元環境相は8月、自身のブログで「アマゾンのホロコースト」という表現を使ったところ、ボルソナロの支持者から激しい批判を浴びた。
NASAの衛星写真は、ボルソナロ政権を動揺させるために加工されたものだと主張するツイッターユーザーさえいる。ソーシャルメディアで世界的にシェアされた写真が、過去の森林火災の写真だったことが分かると、「フェイクニュース」だという声は一段と高まった。