フェイクニュース? アマゾン火災をブラジルが放置する理由
Clearing the Smoke
ブラジル北部のアマゾナス州ウマイタなどでは今年だけで7万件以上の森林火災が起きている UESLEI MARCELINO-REUTERS
<ブラジルメディアは煮え切らず、政治的二極化も招いているが、「地球の肺」とも言われる熱帯雨林の大火災はボルソナロ政権が引き起こした人災だ>
ブラジル最大の都市サンパウロ。その青い空が突然分厚いスモッグに覆われ、街が暗闇に包まれたのは8月19日の昼下がりのこと。やがて大粒の雨が降り始め、街中に焦げ臭い水たまりができた。
まるで映画のような不気味な出来事に、市民は恐れおののいた(実際、アメコミ『バットマン』の舞台となるゴッサム・シティになぞらえる地元メディアもあった)。大雨は寒冷前線の通過が原因という点で、専門家の見解はおおむね一致していたが、黒い雲の正体については意見が割れた。北部のアマゾン川流域で発生している森林火災が影響しているのか、それとも隣国のボリビアやパラグアイから流れてきたのか――。
そんな地元メディアの困惑をよそに、ツイッターをはじめとするソーシャルメディアには、「#アマゾンを救え」といったハッシュタグがあふれた。ハリウッド俳優のレオナルド・ディカプリオや歌手のマドンナらセレブが、アマゾンの森林火災に世界の注目を喚起した。
たちまち外国メディアもアマゾンの森林火災を大きく報じ始めた。今年1月に就任したブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領が、農業や鉱山業のために森林伐採を容認してきたことが、今回の「大惨事」の一因だとする報道も少なくなかった。
だが、ブラジルの主要テレビ局とボルソナロのツイッターからは、さほどの危機感は感じられなかった。20日にサンパウロに次ぐ第2の都市リオデジャネイロで武装した男がバスを乗っ取り、乗客37人を人質に取る事件が起きると、地元メディアはそのニュース一色に染まった。
その一方で、ソーシャルメディアには、アマゾンの火災について沈黙する報道機関の姿勢を批判する声も現れた。「アマゾンの死がテレビ中継されることはないだろう」と皮肉る書き込みも見られた。
NASAの写真の衝撃
実のところ、大西洋に面した南部の街サンパウロの空が黒く染まる何週間も前から、ブラジル北部のアマゾン流域では森林火災が頻発していた。ロンドニア州では今年1月から8月までに、森林火災が190%も増加。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、ブラジル全体では今年に入り7万2000件以上の火災が起きた。これは昨年の同時期よりも84%も多い。