最新記事

気候変動

今の地球のCO2濃度は、人類史上例のない人体実験レベル

Humans Have Never Lived in CO2 Concentrations Seen in Earth’s Atmosphere Today

2019年9月27日(金)17時30分
アリストス・ジョージャウ

人類はこんなにCO2濃度が高い環境で生きたことはかつてない Mohammed Ameen (IRAQ)-REUTERS

<太古からずっと低かったCO2濃度は1965年以降に急上昇、生物としての人類がこの変化にどう適応するか想像もつかない>

人類は大量の化石燃料を燃やし続けているが、米中の科学者グループの研究から、現在の大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度は人類がこれまでに経験した最も高いレベルであることがわかった。グループによると、人類は「自分たちを対象にして科学実験を行っている」ようなものだという。

自然科学の学術誌「ネイチャーコミュニケーションズ」のサイトに今週掲載された、テキサスA&M大学と中国・南京大学の共同研究によると、人類が進化を遂げた約258万年~約1万年前までの更新世の時代、大気中のCO2濃度は平均で250ppm(100万分の250)だった。

これを現在計測されるCO2の濃度と比較すると相当な違いがある。今年5月には、ハワイにあるアメリカ海洋大気庁マウナロア観測所で最高約415ppmのCO2が観測された。

北半球で濃度が高く、夏になると薄くなるCO2 NASA


この観測結果は、この季節では1961年以来の最高値で、地球の大気中のCO2濃度が7年連続で上昇したことを示している。CO2は熱を吸収し、地球温暖化の原因となる。

<参考記事>「気候変動が続くなら子どもは生まない」と抗議し始めた若者たち

太古~1965までは低炭素環境だった

1965年には大気中のCO2の濃度は320ppm前後だった。この頃すでに、過去250万年で最高のレベルにまで濃度は上がっていた。

「今回の研究で、人類の祖先ホモ・サピエンスが登場した約180万年前の時代から1965年まで、人類はCO2の濃度が320ppm以下の『低炭素』環境に生きていたことがわかった」と、今回の研究の共同執筆者チャン・イーゲーはコメントしている。「CO2濃度が高い現在の環境は、気候と地球環境への実験でると同時に、人類への人体実験でもある」

<参考記事>2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

「大気中のCO2濃度の時代変化を研究することは重要だ。すでに気候変動は起きているし、これからもさらに進行するからだ。地球の歴史を調べることが気候変動について学ぶ1つの手段となる」と、チャンは言う。「過去のCO2濃度がどんなレベルだったか、その時どんな気候だったか、そして両者の間にはどのような関連があるか」などを調べる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋

ビジネス

投資家がリスク選好強める、現金は「売りシグナル」点

ビジネス

AIブーム、崩壊ならどの企業にも影響=米アルファベ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中