最新記事

中国

建国70周年に影を落とす中国共産党の憂鬱

China’s Coming Crisis

2019年9月28日(土)13時30分
ミンシン・ペイ (米クレアモント・マッケンナ大学教授、本誌コラムニスト)

成長の減速と米中冷戦、強権支配など悪材料が多過ぎる FEN LI/GETTY IMAGES

<過去の成功要因はほぼ消滅しており100周年まで一党支配が続く保証はない>

中華人民共和国の建国70周年の記念日である10月1日、習近平(シー・チンピン)国家主席は、共産党体制の業績を高らかにうたい上げる演説を行うだろう。しかし、共産党の内部では未来への不安が広がり始めている。

無理もない。長引く景気減速と対米摩擦の激化により、中国共産党創設100周年に当たる2021年は、暗いムードのなかで迎えることになりそうだ。2049年の建国100周年に、共産党の一党支配体制が存続している保証もない。

そもそも中国共産党政権は、一党支配の「寿命」に近づきつつあるのかもしれない。

ほかの国の例を見ると、メキシコの制度的革命党(PRI)は71年(1929~2000年)、旧ソ連の共産党は74年(1917~91年)、中国および台湾の国民党は73年(大陸で1927~ 49年、台湾で49~2000年)で「寿命」が尽きている。

北朝鮮の金一族の独裁体制は、これまで71年間続いている。現在、中国共産党と肩を並べる長期体制はこれだけだ。

中国共産党が未来を楽観できないのは、「歴史の法則」だけが理由ではない。中国が文化大革命のダメージを克服し、この40年間の経済的繁栄を実現する道を開いた要素は、あらかた失われている。

共産党体制の未来にとって最大の脅威は、米中冷戦だ。毛沢東後の時代、中国はおおむね国際舞台で控えめな態度に徹してきた。争いごとを極力避け、国力の増強に専念してきたのだ。

ところが、経済大国として台頭した中国は、強硬な外交政策を推し進めるようになった。アメリカはそれに神経をとがらせ、対中政策を関与型から対決型に転換し始めた。

ナショナリズムを煽る?

米中冷戦では、アメリカが勝利を収める可能性がはるかに高い。アメリカは、軍事力と技術力、そして経済の効率性で中国を上回っている。

ドナルド・トランプ米大統領の言動でほころびが見えているものの、同盟関係もアメリカのほうが強固だ。本格的な米中冷戦が始まれば、アメリカが被るダメージも大きいかもしれないが、中国共産党に暗い未来が訪れることはほぼ間違いない。

中国共産党にとっては、経済面の逆風も強い。中国の目覚ましい経済成長の原動力になったのは、若くて潤沢な労働力、急速な都市化、大規模なインフラ投資、市場の自由化、グローバリゼーションの進展だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争後の平和確保に協力とトランプ氏、プー

ビジネス

中国、TikTok巡る合意承認したもよう=トランプ

ワールド

米政権がクックFRB理事解任巡り最高裁へ上告、下級

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FRBの慎重姿勢で広範に買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中