セクハラ撲滅を阻む新たな問題、「怯える男たち」と「見えない逆襲」
直接触れるなどの露骨なセクハラは職場から姿を消しつつあるようだが…… baona/iStock
<#MeToo運動後、露骨なセクハラは減少しているが、一方で男性たちの行動が悪い方向に変化しているという調査結果が>
約2年前に始まった#MeToo運動の盛り上がりもあり、世界的に職場におけるセクハラやパワハラの悪影響は、企業にとって目をそらすことが許されない問題となった。日本でも、東京ドームシティ内で戦隊ヒーローショーの司会を務めていた女性に対するセクハラ・パワハラが明らかになり、東映は加害者の処分と謝罪に追い込まれた。
実際、コロラド大学のステファニー・ジョンソン准教授らのチームが行った調査によれば、アメリカでもセクハラ行為は減少傾向にあるようだ。調査は2016年と18年の2度、それぞれ250人と263人の女性を対象にアンケートを行ったほか、実際に経験した出来事や、この2年の間に何が変化したかについて詳細な聞き取り調査も実施した。
その結果、上司や同僚にじろじろ見られたり触られたりして不快に感じるといった経験については、16年には66%が被害を訴えていたが18年には25%に。カネや圧力で性的な行為を強要されたと訴える女性は25%から16%に減少した。
規制の強化や企業の自助努力によって、長年にわたり主に女性たちが苦しめられてきた悪習が改められつつある、というのは間違いではないだろう。セクハラを議論したり訴え出たりすることが「普通」になり、女性たちが勇気づけられたことで、加害者になり得る人物が行為を思いとどまるケースが増えたのではないかとジョンソン准教授らは考えている。ヒーローショーのケースについても、事件が発覚したのは被害者女性によるSNSでの告発がきっかけだった。
だが、(多くの場合は初めて)責任をもってこうした問題に取り組むことを求められるようになった企業や経営者たちは、必ずしも望ましい対応ができている訳ではないようだ。同じ調査では、性差別的な発言をする、不適切なエピソードを語る、性差別的な物質を見せるといった不快感を伴う行為は、この2年間で76%から92%に増加したという結果が出た。
女性を退職に追い込むような露骨なセクハラ行為が姿を消す一方で、権利の拡大を訴える女性たちを快く思わない一部の男性による「目に見えにくい」嫌がらせが増えるという反動が起きているのではないか、と調査レポートは指摘している。「この問題への注目が高まったことが、従来の権力ヒエラルキーを守りたい人々による反動として、セクハラを増やしていると考えることができる」