最新記事

テクノロジー

グーグル対オラクル ソフト開発の未来を決める巨大テック企業同士の最終決戦

Google vs Oracle

2019年8月1日(木)15時03分
ロジャー・パーロフ(ジャーナリスト)

google190806c.jpg

連邦控訴審で2回敗訴したグーグル BROOKS KRAFT LLCーCORBIS/GETTY IMAGES


ついに最高裁の出番?

グーグルは別の主張も用意した。仮に著作権が認められるとしても、宣言コードの流用は創造的な表現や社会貢献につながる「フェアユース(公正使用)」に当たるという主張だ。例えば書籍や映画の批評家が対象作品の一部を無償・無断で引用できるのは、フェアユースに当たると判断されるからだ。

オラクルがグーグルに損害賠償を求めたことから始まった法廷闘争で、グーグルは連邦地裁で2回勝訴したが、2回とも連邦巡回控訴裁判所によって決定を覆されている。

12年の地裁は当該のJAVAコードに著作権はないと判断したが、14年の控訴審は逆に著作権を認定。ただし、JAVAのAPIの使用がフェアユースに当たるかどうかの判断について検討が済んでいないとして、地裁に差し戻した。

16年には地裁でフェアユースに当たるとの評決が出たが、18年の控訴審はまたも逆の判断を示し、地裁の陪審員に損害賠償額の算定を命じた。そこでグーグルは最後の手段として、最高裁への上訴に踏み切った。

しかし最高裁がこれを受理するかどうかは、連邦政府の法的立場を代弁するノエル・フランシスコ訟務長官の判断に懸かっている。最高裁は4月末に長官の意見を求めており、答えは年内にも出される見込みだ。

グーグルは15年にも最高裁への上訴を試みているが、受理されなかった。最初の控訴審がJAVAの宣言コードに著作権を認める判断を下した後のことで、当時の訟務長官はまだ最高裁の出番ではないと判断した。

宣言コードに著作権を認める控訴審判決を支持していたからだが、一方で宣言コードの位置付けや競争戦略上の重要性などの「有意義な関心事」はフェアユースの観点から判断すべきだと表明してもいた。

そして、2度目の控訴審はフェアユースの主張を退けた。そうなれば、いよいよ最高裁の出番かもしれない。その裁定が持つ意味はとてつもなく大きい。

「最終的には競争の有無をめぐる問題。この業界には最大限の競争が必要だ」と、弁護士のジョナサン・バンドは言う。彼は、グーグル側の法廷助言者であるコンピューター&コミュニケーションズ企業連合の求めで最高裁への準備書面をまとめた。

フェイスブックやアマゾンと並ぶ巨大企業で、その独占的な地位を利用して競争を阻害していると非難されがちなグーグルが、今回は競争の擁護者として立ち現れている。そのことに違和感を覚える人もいるだろうが、とバンドは言う。「もし控訴審の決定が最終的なものになったら、そうした企業の力はもっと強大になる」。グーグルにとっては実に複雑な結果だが。

<本誌2019年8月6日号掲載>

20190806issue_cover200.jpg
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。


ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受

ビジネス

NY外為市場=ドルおおむね下落、米景気懸念とFRB

ビジネス

ステーブルコイン普及で自然利子率低下、政策金利に下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 8
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 9
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中