グーグル対オラクル ソフト開発の未来を決める巨大テック企業同士の最終決戦
Google vs Oracle
ついに最高裁の出番?
グーグルは別の主張も用意した。仮に著作権が認められるとしても、宣言コードの流用は創造的な表現や社会貢献につながる「フェアユース(公正使用)」に当たるという主張だ。例えば書籍や映画の批評家が対象作品の一部を無償・無断で引用できるのは、フェアユースに当たると判断されるからだ。
オラクルがグーグルに損害賠償を求めたことから始まった法廷闘争で、グーグルは連邦地裁で2回勝訴したが、2回とも連邦巡回控訴裁判所によって決定を覆されている。
12年の地裁は当該のJAVAコードに著作権はないと判断したが、14年の控訴審は逆に著作権を認定。ただし、JAVAのAPIの使用がフェアユースに当たるかどうかの判断について検討が済んでいないとして、地裁に差し戻した。
16年には地裁でフェアユースに当たるとの評決が出たが、18年の控訴審はまたも逆の判断を示し、地裁の陪審員に損害賠償額の算定を命じた。そこでグーグルは最後の手段として、最高裁への上訴に踏み切った。
しかし最高裁がこれを受理するかどうかは、連邦政府の法的立場を代弁するノエル・フランシスコ訟務長官の判断に懸かっている。最高裁は4月末に長官の意見を求めており、答えは年内にも出される見込みだ。
グーグルは15年にも最高裁への上訴を試みているが、受理されなかった。最初の控訴審がJAVAの宣言コードに著作権を認める判断を下した後のことで、当時の訟務長官はまだ最高裁の出番ではないと判断した。
宣言コードに著作権を認める控訴審判決を支持していたからだが、一方で宣言コードの位置付けや競争戦略上の重要性などの「有意義な関心事」はフェアユースの観点から判断すべきだと表明してもいた。
そして、2度目の控訴審はフェアユースの主張を退けた。そうなれば、いよいよ最高裁の出番かもしれない。その裁定が持つ意味はとてつもなく大きい。
「最終的には競争の有無をめぐる問題。この業界には最大限の競争が必要だ」と、弁護士のジョナサン・バンドは言う。彼は、グーグル側の法廷助言者であるコンピューター&コミュニケーションズ企業連合の求めで最高裁への準備書面をまとめた。
フェイスブックやアマゾンと並ぶ巨大企業で、その独占的な地位を利用して競争を阻害していると非難されがちなグーグルが、今回は競争の擁護者として立ち現れている。そのことに違和感を覚える人もいるだろうが、とバンドは言う。「もし控訴審の決定が最終的なものになったら、そうした企業の力はもっと強大になる」。グーグルにとっては実に複雑な結果だが。
<本誌2019年8月6日号掲載>
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