先進国から東南アジアへの廃プラ押し付けは許さない
My Country Is Not A Dumping Ground
ジェンジャロムの違法リサイクル工場の敷地内には大量の廃プラごみが残されていた Lai Seng Sin-REUTERS
<欧米や日本からの違法ごみがマレーシアへ――「プラごみ戦争」終結のためには送り出し先の先進国も協力すべきだ>
5月下旬の炎天下、私はマレーシアのクラン港に立っていた。目の前には海を渡ってきた「プラスチックごみ」のコンテナが並び、当局の検査を待っていた。中身はまちまちで汚染されたごみも交じっており、コンテナが次々と開封されていくたび、私の胸の動悸は激しくなった。
オーストラリアからのコンテナが開封された瞬間を私は決して忘れないだろう。死んだウジ虫だらけの牛乳瓶から腐臭が漂い、吐き気がした。そんなものが海を越えて何千キロも離れた自分の国に届いたという事実にも胸が悪くなった。
17年末に中国がプラスチックごみの輸入禁止を発表。たちまちマレーシアなど東南アジア諸国は先進国の廃棄物の新たな輸送先と化した。実際にはその数カ月前から、既に前例のない大量のプラスチックごみがマレーシアに押し寄せていた。
18年5月、マレーシアでは史上初の政権交代が実現し、私は7月に新政権の環境相に就任した。その直後、私の元にセランゴール州の小さな町ジェンジャロムの住民からプラスチックを燃やす際の悪臭がひどいと苦情が届いた。担当当局が違法なリサイクル工場を閉鎖して一件落着と思っていたのだが、実はこれが先進国が送り付けてくるごみとの戦争の始まりだった。
マレーシアは同月すぐにプラスチックごみの輸入規制・取り締まりを強化したが、その時点で既に何千トンもの汚染されたプラごみが地球の裏側からわが国に押し寄せていた。イギリスやドイツの有名スーパーマーケットのレジ袋、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、日本の一般的なブランドのプラスチック包装材などだ。
当局が閉鎖した違法リサイクル工場の数は既に150を超えている。こうした違法業者のせいで、国内でのプラスチックのリサイクルの全面禁止を求める声も上がっている。かつてはグリーンな産業とされていたものが、環境と健康を脅かすと見なされるようになってしまった。
規制強化にもかかわらず、虚偽申告や輸入許可を悪用するなどして、ごみを違法にマレーシアに持ち込もうとする業者は後を絶たなかった。政府は全ての港で取り締まりを強化して対応してきた。
それにしてもプラごみの管理義務をなぜ受け入れ国だけが負わされるのか。輸出する側も責任を負うべきではないのか。
これは92年に発効したバーゼル条約の精神そのものだ。同条約は、有害廃棄物の国境を越えた移動について受け入れ国と輸出国の双方が等しく管理義務を負うと規定。輸出国(通常は、より多くのリソースとより強力な政府機関を持つ先進国)が途上国への有害廃棄物の投棄防止に重要な役割を持つとしている。