米中摩擦のアメリカ農家に光明? 大麻の原料ヘンプは救世主か
新たな規制の最前線
ヘンプ・ビジネス・ジャーナルによると、ヘンプの花の部分に成分が集中しているCBDの精油は、2017年のヘンプ製品売り上げ全体の23%を占めた。
ヘンプの作付けを監督するのはUSDAだが、ヘンプの規制はおおむね米食品医薬品局(FDA)が担当する。FDAは、CBDを含んだ食品やサプリメントは承認していないが、こうした製品はすでに広く流通している。FDAは、販売を規制するような対策はほとんど講じていない。
さらに、2つ以上の州にまたがる取引は主にFDAの管轄だが、これはヘンプ製品により寛容な法律の州内で生産・販売される製品は合法であることを意味する。
「現在のところ、FDAが取り締まりに動いたのは、がんやエイズなどの治療に効果があるとうたうなどの行き過ぎたケースだけだ」と、弁護士のジョナサン・ヘブンス氏は言う。同氏はFDA規制委員会の元メンバーで、現在は法律事務所ソウル・ユーイング・アーンスタイン&レイアで大麻関連法を担当している。
同氏によると、健康効果をうたわなかったり、そうした触れ込みが控えめなCBD含有製品については、連邦当局は取り締まりをしていないという。「そのため、多くの人が、流通して手に入れやすい状態であることと合法性を混同している」
FDAは、既存のCBD含有製品を評価し、これらを市場に流通させるための戦略をすでに構築している、とロイターにコメントした。
また、一部の企業が違法な形でヘンプ由来の成分を含む製品を販売していることを把握しているが、実際に取り締まる対象としては、根拠のない健康効果をうたう製品を優先していると、FDAは述べた。
「われわれが最も懸念しているのは、がんなどの重大な病気を予防、診断、治療、また治癒できるなどとうたい、消費者の健康と安全をリスクにさらす製品の流通だ」と、FDAは文書で回答した。
CBD入りアイスクリーム
米金融サービスのコーウェン&カンパニーのアナリストは、一部で不安定な要素はあるものの、CBDを原材料に含む人間用とペット用の製品の米国売り上げは、2025年までに160億ドルに達すると予測する。
企業も動いている。米最大の食料品チェーンであるクローガーは11日、17州の1000近い店舗で、CBD入りのクリームやバーム、オイルを販売すると発表した。
英蘭系日曜品大手ユニリーバ傘下ベン&ジェリーズのアイスクリームチェーンは5月末、CBDオイルの消費が「連邦レベルで合法化」され次第、CBD入りアイスクリームを発売すると表明した。
2014年にヘンプ栽培の実験プログラムを始めたケンタッキー州では、それまでタバコ栽培に従事してきた農家が、ヘンプの方が世間の評判も良く、かつ収益性も高いという事実に気づき始めた。
「タバコを栽培していた時は、健康に悪いものを栽培してると皆に言われた」と、タバコ農家の8代目ブライアン・ファーニッシュさんは言う。「人をいい気持ちにさせるものを育てるのは楽しいよ」
トウモロコシや小麦などの農産品を育てる農家が多い中西部では、貿易戦争を脅威に感じており、より大規模な輪作の一作物として、手間がかかるCBD精油のためというよりも、種子と繊維のためにヘンプの栽培を考えている農家もある。