最新記事

アメリカ社会

米中摩擦のアメリカ農家に光明? 大麻の原料ヘンプは救世主か

2019年6月25日(火)10時00分

新たな規制の最前線

ヘンプ・ビジネス・ジャーナルによると、ヘンプの花の部分に成分が集中しているCBDの精油は、2017年のヘンプ製品売り上げ全体の23%を占めた。

ヘンプの作付けを監督するのはUSDAだが、ヘンプの規制はおおむね米食品医薬品局(FDA)が担当する。FDAは、CBDを含んだ食品やサプリメントは承認していないが、こうした製品はすでに広く流通している。FDAは、販売を規制するような対策はほとんど講じていない。

さらに、2つ以上の州にまたがる取引は主にFDAの管轄だが、これはヘンプ製品により寛容な法律の州内で生産・販売される製品は合法であることを意味する。

「現在のところ、FDAが取り締まりに動いたのは、がんやエイズなどの治療に効果があるとうたうなどの行き過ぎたケースだけだ」と、弁護士のジョナサン・ヘブンス氏は言う。同氏はFDA規制委員会の元メンバーで、現在は法律事務所ソウル・ユーイング・アーンスタイン&レイアで大麻関連法を担当している。

同氏によると、健康効果をうたわなかったり、そうした触れ込みが控えめなCBD含有製品については、連邦当局は取り締まりをしていないという。「そのため、多くの人が、流通して手に入れやすい状態であることと合法性を混同している」

FDAは、既存のCBD含有製品を評価し、これらを市場に流通させるための戦略をすでに構築している、とロイターにコメントした。

また、一部の企業が違法な形でヘンプ由来の成分を含む製品を販売していることを把握しているが、実際に取り締まる対象としては、根拠のない健康効果をうたう製品を優先していると、FDAは述べた。

「われわれが最も懸念しているのは、がんなどの重大な病気を予防、診断、治療、また治癒できるなどとうたい、消費者の健康と安全をリスクにさらす製品の流通だ」と、FDAは文書で回答した。

CBD入りアイスクリーム

米金融サービスのコーウェン&カンパニーのアナリストは、一部で不安定な要素はあるものの、CBDを原材料に含む人間用とペット用の製品の米国売り上げは、2025年までに160億ドルに達すると予測する。

企業も動いている。米最大の食料品チェーンであるクローガーは11日、17州の1000近い店舗で、CBD入りのクリームやバーム、オイルを販売すると発表した。

英蘭系日曜品大手ユニリーバ傘下ベン&ジェリーズのアイスクリームチェーンは5月末、CBDオイルの消費が「連邦レベルで合法化」され次第、CBD入りアイスクリームを発売すると表明した。

2014年にヘンプ栽培の実験プログラムを始めたケンタッキー州では、それまでタバコ栽培に従事してきた農家が、ヘンプの方が世間の評判も良く、かつ収益性も高いという事実に気づき始めた。

「タバコを栽培していた時は、健康に悪いものを栽培してると皆に言われた」と、タバコ農家の8代目ブライアン・ファーニッシュさんは言う。「人をいい気持ちにさせるものを育てるのは楽しいよ」

トウモロコシや小麦などの農産品を育てる農家が多い中西部では、貿易戦争を脅威に感じており、より大規模な輪作の一作物として、手間がかかるCBD精油のためというよりも、種子と繊維のためにヘンプの栽培を考えている農家もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日米電話会談WSJ報道、政府が改めて一部否定 共同

ビジネス

EXCLUSIVE-中国2企業がベトナム5G契約獲

ワールド

トランプ氏、関税収入で所得税撤廃も

ビジネス

伊銀モンテ・パスキの同業買収、当局が捜査=関係者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中