50代の半数はもう手遅れか──生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する
3|年間収入別、老後の生活のために用意すべき資産金額
最後に老後のために用意すべき資産金額であるが、年間収入別の退職後の可処分所得と退職後の消費支出を基準に、死ぬ前に資産が枯渇する確率が5%となる資産額を算出し(5)、これを年間収入別の老後の生活のために用意すべき金額6とする。結果は、図表3の通りである。
参考までに、退職後、年率1.5%7で運用できる場合に必要な金額も記しているが、運用に失敗して資産が目減りし、その結果、死ぬ前に資産が枯渇するリスクは勘案していないので注意が必要である。
一般的に、老後に必要な資産金額は2,000万円~3,000万円が目安とされるが、年間収入が500万円未満の世帯であれば、2,000万円もあれば退職後も現在と同程度の生活水準が十分維持可能である。一方、50代世帯の34%を占める年間収入が500~750万円未満の世帯の場合、3,200万円必要であり2,000万円~3,000万円では不足する。その結果、退職後に生活水準を5%程度落とす必要が生じる。但し、退職後も年率1.5%で安定的に運用できるなら、2,400万円で生活水準が維持可能である。年間収入が1,000万円以上の世帯に至っては、6,550万円ないと生活水準を維持できず、2,000万円~3,000万円では老後に生活水準を20%以上落とす必要が生じる。また、退職後も年率1.5%で安定的に運用できるとしても、5,050万円以上の資産を用意しないと生活水準を維持できない。
3──準備が整っている人はどれくらいいるのか
では、実際に50代で既に老後の生活のための準備が整っている世帯はどれくらいあるのだろうか。そこで、家計調査及び金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年調査結果)を基に、50代の年収別純資産残高(金融資産―借入金)の分布を推計した。個人年金は年収別純資産残高に含まれるが、退職時に支払われる退職一時金や企業独自の退職年金は含まれていない。
そこで、企業の退職金事情に関する2つの統計資料(厚生労働省平成30年就労条件総合調査、東京都労働相談情報センター中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版))及び中小企業庁 中小企業の企業数・事業所数(2016年)を基に、定年退職時の退職給付を見積もりに加算する。不動産も年収別純資産残高に含まれていないが、賃料収入が期待できる自宅以外不動産を保有している層は限定的であると考え、考慮していない。
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5 基礎研レポート『資産が枯渇しない生活水準を考える-適正支出に対するアドバイス力強化に期待する』(2018年5月8日)
6 これに加え病気や介護などに備え、保険への加入か別途予備費が必要である点に注意が必要である。
7 脚注iによると、投資収益率は1-2%だがあまり値下がりリスクが高くない金融商品を嗜好する高齢者が最も多い