平成における消費者の変容:経済不安でも満足度の高い若者
二人以上勤労者世帯の大人1人当たりの可処分所得は、世帯主の年齢が35~39歳と40~44歳の世帯で最も多く、平均18.7万円である(図表6)。2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の男性と比べると▲4.3万円も下回る。女性と比べると若干多いものの、家族世帯では、この中から教育費など子どもにかかる支出も出さなくてはならない。よって、家族世帯の大人1人が自由にできる金額は、図表6で示す値よりも大幅に少なくなるだろう。
一方で1人暮らしの若者は、若者の中でも経済的に余裕のある層という可能性もある。
そこで、非正規雇用の若者の可処分所得を推計したところ、25~29歳では男性は月平均19.8万円、女性は17.6万円となり3、非正規雇用者でもバブル期の1人暮らしの若者よりも多い。
なお、25~29歳の非正規雇用者の約3割は大卒・大学院卒であり、大卒・大学院卒の非正規雇用者の可処分所得を推計すると、男性22.1万円、女性20.2万円となる。
景気低迷の中で育った今の若者だが、実は目先の収入は案外ある。また、未婚化の進行や初婚年齢の上昇で、かつてより自由に使えるお金を持つ独身の若者が増えている。このことが、図表2の所得・収入の満足度の高さにつながるのではないだろうか。
4――「今の若者はお金を使わない」?~消費性向の低下、経済状況によらず堅実・合理的な諸費態度
「今の若者はお金がない」わけではないが、「お金を使わない」傾向はあるようだ。
総務省「全国消費実態調査」にて、1989年と2014年の30歳未満の単身勤労者世帯の消費支出を比べると、男性は15.4万円から15.6万円へ(+2.2万円)、女性は15.3万円から16.1万円へ(+0.8万円)と名目ではやや増えているが(図表7)、実質では減っている(▲9.3%、▲5.4%)。なお、2009年までは男性は実質増加傾向にあったが、女性は1994年と1999年は減少している4。つまり、可処分所得は一貫して増えていたが、消費支出は必ずしも増えているわけではない。さらに、消費性向を見ても、男女ともおおむね低下傾向にある。
つまり、若年単身勤労者世帯の可処分所得は増えているが、増えた所得を必ずしも消費へ回すわけではなく貯蓄へ向けている。そして、その割合は増えており、若者の貯蓄志向は高まっている。
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3 厚生労働省「平成25 年賃金構造基本統計調査」及び総務省「平成26 年全国消費実態調査」より推計。「賃金構造基本統計調査」の最新値を使って推計すると、非正規雇用者の可処分所得はさらに増える。
4 対1989 年実質増減率は、1994 年は男性+1.3%、女性▲3.2%、1999 年は男性+5.7%、女性▲1.1%、2004 年は男性+7.1%、女性+4.9%、2009 年は男性+8.5%、女性+5.3%。