グーグルよ、「邪悪」になれるのか?――米中AI武器利用の狭間で
これを実現するために、Project Mavenはドローンが撮影した膨大な画像や動画を学習データとしてアルゴリズムを構築することを基軸としている。
どこからどう見ても、「AIの軍事利用」だ。
そこで2018年6月、グーグルは契約を更新する2019年初頭を目途に、Project Mavenから抜けると宣言した。
なぜなら3000人ほどの従業員が「AIを軍事利用するプログラムへの参加」に反対する署名運動をして、次々と重要な人材がグーグルから去っていったからだ。
グーグルには「邪悪になるな(Don't Be Evil)」という理念がある。だからこそ、多くの優秀な技術者や研究者を集めることができた。
「グーグルの女神」と称せられた李飛飛が突如グーグルを去った背景にも、こういった事情があったのだろう。
もう一度、前述の李飛飛のスピーチに目をやってほしい。テーマは「AIの民主化」で、その中には「アルゴリズムの民主化」がある。これはProject Mavenを示唆してのことだったにちがいない。だから彼女は「AIの武器利用」の可能性のあるグーグルを去ったのだろう。そして中国の「次世代AI発展計画」の中にある「AIの軍民利用」をも警戒して、「グーグルAI中国センター」を去り、スタンフォード大学に戻る道を選んだと解釈される。
グーグルのピチャイCEOは2018年6月に「AIを武器利用に使用しない」という、グーグルの「AI原則」を発表した。
そして、その「AI原則」を盾にして、約束通り、2019年3月にProject Mavenの契約が切れるのを待って、米・国防総省から離れることになった。
だからこそ、この時期に、冒頭で書いた米上院の軍事委員会公聴会でのグーグル批判が飛び出す結果を招いたものと思われる。