最新記事

北朝鮮

金正恩の理想郷建設に赤信号 北朝鮮、「強制労働」の深い闇

2019年2月25日(月)15時45分

北朝鮮を独裁支配している金一族の発祥の地とされる聖地・白頭山を数千人の学生が1月、働きに訪れた。この山麓の都市サムジョン(三池淵)に、金正恩・朝鮮労働党委員長(写真中央)は大規模な経済拠点を築こうとしている。サムジョンで2017年撮影。朝鮮中央通信社(KCNA)提供(2019年 ロイター)

北朝鮮を長年独裁支配している金一族の発祥の地とされる聖地・白頭山を数千人の学生が1月、働きに訪れた。この山麓の都市サムジョン(三池淵)に、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は大規模な経済拠点を築こうとしている。

ここは「自立経済」運動の一環として、自身が音頭を取る最大級の建設プロジェクトだ。その一方で、正恩氏は、今月末に開催される2回目の米朝首脳会談では、トランプ米大統領を説得し、経済制裁を解除させたいと、目論んでいる。

正恩氏は昨年少なくとも5度、中国国境に近いサムジョンを視察に訪れた。この「革命の聖地」の近代化を自ら命じてから、わずか4年後の2020年末までに、この地に新しい集合住宅、ホテル、スキーリゾート施設に加え、商業・文化・医療施設を備えた「社会主義のユートピア」を築こうというのだ。

同国の国営メディアは、愛国的な学生たちが、厳しい天候をものともせず、凍りついた米飯を食べ、彼らの健康を気遣う教師たちを尻目に、巨大な建設現場で精を出して働く姿を、感動的に描き出した。

今回のような学生の大量動員は、正恩氏と朝鮮労働党に対する忠誠を装った「奴隷労働」と同じだ、と北朝鮮を逃れた脱北者や人権活動家は主張している。

こうした若い労働者は、報酬もなく、貧弱な食事を与えられ、1日12時間以上、最長で10年働かされる。見返りは、大学への入学、もしくは強力な朝鮮労働党に入党するチャンスが高まることだ。

だが、北朝鮮の民間市場が盛んになり、政治的地位よりも経済的な安定性を重視する国民が増える中で、近年では若い労働者を徴募することが難しくなっているという。

「有利な就職機会につながる党員資格や教育の機会が得られるのでなければ、誰も募集に応じないだろう。だが最近では、市場を通じておおいに稼ぐことができる」と元労働者で脱北したチョ・チュンフイさんは言う。労働奉仕の基盤は忠誠心だ。しかし、お金の魅力を覚えてしまった人々に何を期待できるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB追加利下げ、ハードル非常に高い=シュナーベル

ビジネス

英BP、第2四半期は原油安の影響受ける見込み 上流

ビジネス

アングル:変わる消費、百貨店が適応模索 インバウン

ビジネス

世界株式指標、来年半ばまでに約5%上昇へ=シティグ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中