最新記事

生物

絶滅危惧種が英国の食卓に──国民食フィッシュ&チップスのDNA調査で明らかに

2019年2月4日(月)17時20分
松丸さとみ

絶滅危惧種に指定されているアブラツノザメもフィッシュ&チップス店でみつかった wikipedia-Public Domain

<イギリスで、フィッシュ&チップスなどの小売店で売られていたサメの肉のDNA調査を行なったところ、絶滅危惧種に指定されている種のものが売られていたことが明らかになった>

小売店や卸売店のサメ肉を分析

英国の国民食とも言えるフィッシュ&チップスは、タラなどの白身魚が一般的だ。しかしサメが使用されていることも少なくなく、その際は「Huss」、「Rock Salmon」、「Rock Eel」といった名称が使用されるという。

エクセター大学はこのほど、フィッシュ&チップスなどの小売店で上記の名称で売られていたサメの肉のDNA調査を行なったところ、絶滅危惧種に指定されている種のものが売られていたことが明らかになった。調査結果は、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されている。

エクセター大学の科学者たちは、複数のフィッシュ&チップス店と鮮魚店からサメ肉のサンプル(フィッシュ&チップス店から78点、鮮魚店から39点)を入手し分析した。また、英国内のアジア系レストランやスーパーマーケットに卸している卸業者1軒で扱っていたサメのヒレ10点と、モザンビークからアジアへ輸出される途中で英国の国境管理当局に押収されたサメのヒレ30点についてもそれぞれ分析した。

分析には、種が特定できるDNAバーコーディングという方法を採用したという。

フィッシュ&チップス店のサメはほぼ絶滅危惧種

卸売業者で購入したサメのヒレのDNAを分析したところ、国際自然保護連合(IUCN)から世界的な絶滅危惧種に指定されており、国際取引が規制されているアカシュモクザメ(スカラップド・ハンマーヘッド)が含まれていた。

調査を行なった科学者の1人、グリフィス博士によると、アカシュモクザメの英国への輸入は、厳しい条件があるものの許可はされている。しかしヒレはすぐに体から外され、乾燥され、皮を剥いで漂白した状態で市場に出るため、今回博士らがヒレを入手した卸業者は、それがどの種類のサメのものかは知らずに売っていたという。

一方でフィッシュ&チップス店から収集したサメ肉のDNAを分析した結果、最も多かったのはアブラツノザメだった。IUCNによりヨーロッパで絶滅危惧種、世界的には危急種に指定されているものだ。鮮魚店で売られていたサメ肉の中にもアブラツノザメは含まれていた。

matumaru0204a.jpg

アブラツノザメ wikipedia-Public Domain

ガーディアン紙によると、2011年までは欧州連合(EU)でアブラツノザメの捕獲は禁止されていたが、現在は他の種類の魚を捕獲しようとした際にネットに引っかかってしまったものに関しては、販売が許可されているという。

また米CNNによると、米国やカナダではアブラツノザメの捕獲は許されているため、そこから英国へ入ってくる分もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を

ワールド

米関税措置、WTO協定との整合性に懸念=外務省幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中