「軟弱系」アイドル旋風に共産党は渋い顔?
China's Pop Idols Are Too Soft for the Party
始まりは、01年の台湾ドラマ『流星花園』だ(原作は日本の少女漫画『花より男子』)。名門大学のキャンパスに君臨する資産家一族の御曹司4人組(「F4」と呼ばれている)と、彼らとぶつかり合う女の子を軸にストーリーが展開する。
『流星花園』はアジアの女性をとりこにした。中国の女性も例外ではなかった。4人組が戯れるオープニングに始まり、大邸宅のバスタブで物思いにふける俳優のジェリー・イェンをなめ回すように映すシーンなど、若い女性の性的・情緒的欲求を強く意識した作品になっている。
アイドル産業で貿易黒字
00年代半ばになると、韓流ブームが到来する。09年には、同じく『花より男子』が原作の韓国ドラマ『コッポダナムジャ』(邦題『花より男子 ~ Boys Over Flowers』)が放送され、台湾版以上の大ヒットになった。
この時期、男性アイドルの美の基準が大きく変わり始めた。KポップやKドラマの男性たちは、メーキャップや時には美容整形により、いっそう外見に磨きを掛けるようになったのだ。
韓流ブームが中国本土に上陸した頃、中国では都市の中流層が増加し始めていた。そうした家庭に育った思春期の娘たちは、香港の往年の俳優アンディ・ラウやジェリー・イェンに夢中になった世代と違って、自由に使える小遣いを持っていた。こうして男性アイドル業界がビッグビジネスに発展するのに伴い、次々と新しいアイドルが登場するようになった。
Kポップブームが中国本土で一気に爆発したのは13年。それに火を付けたのは、前年にデビューした中韓混合グループ「EXO(エクソ)」だった。
EXO結成時の中国人メンバーであるウー・イーファンとルー・ハンの人気は絶大だった。ティーンエージャーの女の子たちは、うっとりした表情で2人の魅力を何時間も語り合ったものだ。2人はEXO脱退後も中国で一流企業のCM契約を次々と獲得するなど、トップアイドルの地位を築いている。
中国政府がこの状況に苦々しい思いをしているとしても、それを表には出していない。なにしろ小鮮肉たちのおかげで、中国は歴史上初めてアイドル産業で「貿易黒字」を計上できている。それに、小鮮肉をプロパガンダ映画に起用して、若い世代の国家への忠誠心を高めたいという思惑もある。