アメフトの元スター選手を広告に起用したナイキ、人権と愛国の落とし穴にはまる
Nike Factory Workers Still Work Long Days for Low Wages
これらの3カ国では、衣料製造労働者の平均賃金はいわゆる「生活賃金(一定レベルの生活を維持できる時間給)」よりも45%~65%低いという。
ロイター通信の取材に対してナイキは、すべての工場が最低でもその国の法律で規定された「最低賃金」か、または法律で規定された残業手当などすべての手当を含む「現行賃金」を支払っていると答えた。
ナイキの広報担当者は、「弊社は体系的な待遇改善のため、各国政府、製造業者、NGO、労働組合、そして労働者との対話に長年、時間を割いてきている」と語っている。
しかし労働者支援団体「倫理的取引イニシアティブ」のマーティン・バトルは、ナイキの工場は労働者を「貧困のサイクルに陥れて」いる可能性がある、と主張する。
2017年6月の英ガーディアン紙の報道によれば、ナイキ、プーマ、アシックス、VFC(米アパレルメーカー)の4社の製品を製造するカンボジアの4つの工場を合わせて、過去1年間に500人以上の労働者が職場で体調を崩して病院に運ばれたという。4社ともこうした事態が発生したことを認めている。倒れた労働者のほとんどが、高温と長時間労働が原因の体調不良だった。
キャパニックを嫌う者も
労働組合の代表や労働者は、多くの労働者が1日10時間以上、週に6日間働き、工場内はときには35度前後の高温になることもあると語っている。4社のいずれも月給400ドルに満たないカンボジアの「生活賃金」を支払っていなかった。
それでも、ナイキをはじめ各スポーツウェアメーカーの労働条件は、世界的なアパレル企業の多くと同程度。衣料産業が、アジア全域で経済成長に多大な貢献をしていることは事実だ。
「衣料産業はアジアで何百万という雇用を地元住民に提供している。アジア各国の急激な経済成長を支えている。しかし急激な成長には対価が付きもので、それを支払わされているのが工場労働者だ」と、アジア地域の労働者の賃金引き上げを推進する団体「アジア・フロアー・ウェイジ」はウェブサイトで解説している。
「すべての衣料労働者は、住居や食品、教育、医療といった自分と家族の基本的なニーズを満たすために、賃金の引き上げが必要だ。しかしある国の労働者が、賃金や労働環境を改善しようと動くと、企業側は賃金や労働環境が悪い別の国に工場を移してしまう」と、問題点を指摘している。
一部の消費者の間では今、ナイキのシューズを燃やしたり、ナイキの靴下を引き裂いたりするナイキ不買運動が起こっているが、皮肉にもそれは搾取工場のためではない。国歌斉唱で立たずにひざまずいていたキャパニックがナイキの「顔」になることに抗議しているのだ。彼らに言わせれば、キャパニックはアメリカの国歌にも国旗にも敬意を払わない裏切り者なのだ。ナイキとキャパニックは、どちらにとっても思ったほどいい組み合わせではなかったようだ。
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