「世界一早く水没する都市ジャカルタ」BBC報道にインドネシアが動じない理由とは?
ジャカルタは北でジャワ海に面し、南部は山間部で降雨がジャカルタ市の地下に豊富な水脈を作り地下水を提供している。さらに市内には13の大小河川が流れてジャワ海に注ぐなど、そもそも地盤が軟弱で全体が「沼地」状態にある。このためジャカルタでは、ちょっとした大雨でも市内各所で大洪水が発生、市民生活や交通網に深刻な影響をもたらすのが常である。
こうしたインドネシア特有の環境に地下水汲み上げによる地盤沈下と海面上昇が相乗効果となり水没の危機に見舞われているのだ。
■参考記事「地球温暖化による海面上昇 90年代以降に上昇ペースが加速」
また2015年には国連と世界銀行が行った気候変動政府間パネルでの発表で、ジャカルタの大半が海面下に水没するのは2025年と予想、海水が現在の海岸線から南の内陸部へ約3km流入し、北部商業地区の大半がマヒして数百万人が避難する事態になると警告している。
今後10年間で最大5メートル地盤が沈下する恐れがあり、2030年にはスカルノ・ハッタ国際空港が海面下に、2050年には政府機関が集中しているジャカルタ市内中心部が水に漬かるだろうと指摘している。
インドネシア政府はこうした各種予測や警告を受けて、ジャカルタ市内の排水システム工事を着工させ洪水対策を進めるとともにジャカルタ沖に巨大な防潮堤や堰の建設をオランダ政府主導で進めることを決め、2014年からその第1期工事として既存の防潮堤のかさ上げ工事を始めている。
日本の技術協力で地盤沈下対策も
2017年7月27日にはインドネシア政府公共事業・国民住宅省水資源総局と日本の国際協力機構(JICA)との間で開発計画調査型技術協力「ジャカルタ地盤沈下対策プロジェクト」が署名され、2020年9月まで地盤沈下や地下水の現状把握、地盤沈下対策のアクションプラン作成などで協力することが決まった。
ジャカルタでは以前、度重なる洪水対策への協力のため日本の専門家が実地調査のためにジャカルタ入りしたものの、有効な対策を見出せなかった経緯もあり、限られた時間の中でJICAの協力でどこまで実効性のある対策が打ち出せるか、注目と期待が集まっている。